船体の製作に入る前に一つ整理することがあります。
以前の記事で船底の諸孔を検討した際に、隼鷹固有の資料が無いため当初は手元にあった飛龍の図面を流用したのですが、「飛龍と隼鷹では復水器の仕様が異なるから、参考にすべきは他の商船ではないか」という指摘を受けました。全くその通りなので改めて資料を探すことにしました。
その結果、国会図書館に所蔵されているモータシップという雑誌の1940年7月号に掲載されている客船新田丸(後の空母冲鷹)の機関室全体装置図に行き当たりました。機器説明の多くは印刷が潰れていますが、主なものは何とか判読が可能です。
客船新田丸(空母冲鷹)機械室左舷側装置図
モータシップ1940年7月号掲載図面より作成
(本日の画像はクリックすると別窓で拡大表示します) 船舶用のタービン機関の仕組みを大雑把に説明すると、缶室のボイラーで焚いた高圧蒸気をタービンに送って推進力に替え、圧の落ちた蒸気を復水器で冷却して水に替え、ボイラーに送って焚くの繰り返しになります。この蒸気の冷却に大量の海水が必要になるため、水線下には海水の取入と排出口があり、それらの位置は冷却器である復水器の仕様や装備位置と関係があります。
それで新田丸の復水器は低圧タービンの下にあり、船首側の船底にある吸入弁から循環水ポンプで海水を送り込み、冷却後に舷側の吐捨弁から排出している事がこの図面からわかります。隼鷹も復水器の仕様は同じなので給排水関係も同様と考えますが、復水器の正確な位置を示す資料がありません。機関室のおおまかな機器配置は一般艤装図に描かれている場合もあるのですが、隼鷹型空母(橿原丸級客船)で入手できた図面はいずれも機関室の配置が空白で何も描かれていません。
ただ、飛鷹の昭和18年6月14日出図の艦内側面図(写真日本の軍艦別巻図面集で隼鷹として描かれているものと同じ)には、機器の記載はありませんが機械室の構造が一部描かれています。
空母飛鷹一般艤装図 艦内側面より
機関室の状況(艦底より中甲板まで) これを見ると、93-98番フレームに掛けて空洞を作る形で鋼材が組まれているように描かれています。上で述べた新田丸の装置図と比較すると、主復水器の周辺の構造とよく似ています。そのため、隼鷹の主復水器は新田丸と同じく低圧タービンの下に付く形だったのかもしれません。もしそうだとすれば、主復水器の海水吐捨弁はこの近辺-新田丸と同じ仕様ならば93-98番フレーム付近ということになります。
長くなるので以下次回。