防衛研究所の史料閲覧室に行ってきました。(その5)

2014–08–23 (Sat)
 前回述べた既成艦船工事記録に関しては、資料の性格上他の資料と合わせて検討すべきもので、単純にここに記載があるからこうだ的な事は述べられません。田村氏が内容を精査するのに30年掛かったというのも全く以て納得できるものです。興味の範囲内の内容は確認してきましたが、具体的には参考という扱いになるかもしれません。



 次に閲覧したのはマリアナ沖海戦の653航空隊の戦闘詳報。内容そのものはアジア歴史センターで公開(Ref.C08030040000「昭和17年6月1日~昭和19年6月30日 あ号作戦戦時日誌戦闘詳報(3)」)されていますが、ここに添付されている空母千代田艦上の写真の原本を見てきました。


光人社刊「伝承・戦艦大和」上巻p393より

 写真そのものは各種書籍に転載されているので御存知の方も多いと思います。このブログでも以前手前に写っている「85」について触れましたが、今回は飛行甲板を木甲板とする根拠とされている甲板上の「すじ」について、本当に木の接合部なのか複写印刷では今一つよくわからないので、原写真に当たった訳です。

 詳しくはいずれ述べますが、昭和16年の翔鶴型以降、19年の大鳳までの間に完成した一連の航空母艦の飛行甲板が、艦によって木甲板と鉄甲板に別れている理由は一般に言われている資材不足でも完成時期でもないのではないか、その関連で千代田の飛行甲板は木甲板ではなく千歳と同じく鉄甲板ではないかという疑念があるからです(千歳は川崎まなぶ著/大日本絵画刊「マリアナ沖海戦」に掲載されている集合写真から明らかに鉄甲板です)。

 それで、原写真を見た印象として、①の黒く写っている部分は影ではなく明暗の縁が明確に切れています。前部エレベータが降りている開口部のようで、ここからも撮影位置が公式図上の85番フレームより艦首側である事が推察できます。②の一見木目に見えるすじは、間隔が一定ではない上に③の付近では手前から来るすじがつながっていません。この部分の奥④ではすじそのものが写っていません(手前はこの画像では続いているようにも見えますが、原写真でははっきりしません)。そもそも木甲板であるならば縁の鉄の滑り止めに接する部分にも木の接合部が見えているはずですが、この写真からは確認できません。

 写真に写っているすじが木の接合部でないなら何かという問題は残りますし、所詮個人的な印象なので確証に欠ける部分はありますが、原写真を見た限りではこれを以て空母千代田の飛行甲板が木甲板である証拠とは言い切れないのではないかという印象を強くしました。

 ちなみにこの653空戦闘詳報に添付されている写真ですが、アジ歴データp60はここで述べた千代田艦上のもの、p61~62は上空の敵機が写っています。p63は千代田の被弾を他艦から撮影した写真で、水平線左側に小型艦艇、中央に大型艦、右側に被弾して煙を上げる艦がいずれも小さく写っています。データには潰れて反映されていませんが、原資料には中央の大型艦に「YAMATO?」の書き込みがあります。確かに大和型戦艦のようにも見える写真ですが、図書出版社の「日本戦艦戦史」によれば被弾当時の千代田の直衛は金剛と榛名ということなので、これが正しければどちらかという事になります。

 以下次回。

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