装備品や細部のモールドは金剛型戦艦の頃よりは向上の跡があり、キノコ型の吸気口も別部品になっています。細部はできるだけ細かくしようとした跡はありますが、缶室吸気口や艦載艇の表現などバラつきも気になります。装備品に関しては気になるものがあれば外部のパーツやエッチングセットの中から取り替えてゆけば良いと思いますが、全体の統一性という事はよく考える必要があると思います。
14cm主砲は部品の精度が今一つで、説明書の指示通りに砲盾(I4)内部のガイドに沿って砲後部(I6)を接着すると砲盾全体が前につんのめる形になっていまいます。またその後に砲身(I12)を接着すると角度が決まらない上に隙間も出て、砲身と砲後部と砲盾も上から見て一直線にならずに曲がる可能性があります。そのため、最初に砲身と砲後部を接着してしまい、その後に砲盾を砲身側から通して接着すると上手く組み立てられると思います。その際に、砲盾の底と砲座の円形の部分が水平になるように、かつ砲が砲盾の内部で傾かないよう注意する必要があります。
舷外電路はキットに最初からモールドされています。5,500トン軽巡は大戦中の写真資料が少なく長良の装着状況もはっきりわからないはずですが、手持ちの写真を見る限りでは各艦共に重巡ほど大きな違いはないように見えます。ただ、個別には微妙な違いがあるようですし、防空巡洋艦に改造された後の五十鈴には電路が存在しません。今後のバリエーション展開がどの程度あるのかは判りませんが、ここはタミヤの最上型重巡のように電路はエッチングに任せた方が無難だったようにも思います。
最初にも書いたように、5,500トン型の軽巡は先の大戦では戦闘部隊の旗艦として活動し、戦史上は決して欠くことのできない艦ですが、重巡や駆逐艦に比べて兵装が弱く外観もクラッシックな印象が否めないものまた事実です。しかしながら、大きさ的にも部品数も駆逐艦と重巡の間に入るもので、初心者が船の模型の経験を積んでゆくには手頃なものです。かつてのニチモ1/200と1/500には小艦艇と大型艦の「ブリッジ」になるキットが遂に現れなかったことを思うとき、かかるキットは1/350の内容に厚みを持たせるためにも重要なものではないかと考えます。
今回のアオシマのキットは細部には向上の跡が見られるものの、艦橋など全体のシルエット上のバランスにやや欠ける部分があり、考証面での疑問も含めて逆の意味で「らしさ」を失っていた点は非常に気になります。メーカーサイトのブログでは満身創痍になるほど力を入れたと
書かれていましたが、戦時中の同型姉妹艦の残存写真資料による検討すら行った跡が見受けられないのに満身創痍だと言うのなら、厳しい表現ですが力を入れていたポイントが的外れだったと書くしかありません。
とはいえ、5,500トン型に関しては上で述べたように発売された事に意義があるように考えます。既に球磨の発売がアナウンスされていますが、バリエーションはあまり期待できないかもしれません。重雷装艦や回天母艦は各人の改造になるかもしれませんが、細かい兵装変化やディテールの統一性など、より大きく精巧な模型を作るための土台としても貴重なキットです。
あと1回続きます。