雑感:アオシマ1/350日本海軍軽巡洋艦「長良」(その3)

2009–08–14 (Fri)
 まず、キットを仮組して気になった事ですが、艦橋と煙突の位置関係にどうも違和感があります。これまで写真で見てきた長良型軽巡のイメージと合いません。キットでは羅針艦橋甲板(J16)の上面の高さは第一煙突の頂部近くに位置しますが、KKベストセラーズ刊日本海軍全艦艇史上巻p287に掲載されている、昭和11年撮影の長良の写真を見る限りでは、煙突頂部よりは少し下側に位置しているように見えます。また同ページ0648のほぼ正面から撮影された写真では、艦橋側面の見張所の屋根と煙突格子の頂部がほぼ同じ位置にあるように見えます。キットでは見張所は煙突頂部より約1.5mm程度上に位置します。


赤線:キットの羅針艦橋甲板の位置
青線:阿武隈の公式図による位置


KKベストセラーズ刊日本海軍全艦艇史上巻p287より
長良の羅針艦橋甲板と煙突の位置関係に注意

 長良の公式図が手元にないため確証はありませんが、学研の太平洋戦記シリーズNo.32 軽巡球磨・長良・川内型に掲載されている、昭和17年作成の阿武隈の公式図を見ると、羅針艦橋甲板の高さは第一煙突の頂部付近ではなく、煙突格子の基部付近に位置しているように描かれています。この図面に併記されているスケールから割り出した煙突の高さと、軽巡北上の公式図から割り出した第一煙突の高さはキットの値とほぼ一致します。そのため、長良と阿武隈では艦橋の仕様が異なっていた可能性も考えられますが、キットの艦橋は上部の見張所も含めて2mm程度高く、そのために第一煙突との位置関係が微妙にズレているのではないかと考えます。
(Japanese Cruisers of the Pacific Warのp176に掲載されている竣工時の長良の艦橋側面図を、併記されているスケールから各甲板の高さを割り出して1/350で割ったところでは、ほぼキットの数値に一致します。ただし、p177の阿武隈の艦橋図は各甲板の高さが長良とほぼ同じであるように描かれています)

 また、後部マストも実艦写真に比べてかなり高い印象を受けます。これも長良の公式図がないため確証がないのですが、前述の阿武隈の公式図と比較すると、煙突の高さ(頂部の雨除け格子を含まない)に対するシェルターデッキからクロスツリー(部品E17)迄の高さの比率がだいたい1:1.73であるのに対し、キットはほぼ2倍で、1/350換算でこの位置で既に6mmほど高い計算になります。その上の十字型のトップマストも写真を見る限りではやや高い(長い)ように見えます。ただし、後部マストを短縮する場合はデリックブーム(D20)を切り詰め、専用エッチングを使う時も同様の加工を加える必要があります。



 艦橋と後部マスト以外にも考証面で幾つか気になる点があります。

 まず、煙突の頂部は、実艦ではブリキ缶を切って雨除け格子を付けたような形状ですが、キットは内側にすぼまってその上に格子があるような表現になっています。高さ的に雨除け格子の一部を再現したものではないようで、これも全体の印象を悪くしている一因です。もし雨除け格子を自作できるのであれば、キットの煙突頂部の部品(E3、E4)は使わずに上部を1.5mm延長した上で格子を取り付けるとかなり印象が良くなると思います。

 説明書課程3で船体側面の左舷側後部に4ヶ所穴を開けるよう指示されています。右舷側にも穴がありますが、これは左舷のみ開けます。

 次に、過程12のメインマストの製作ですが、ここで取り付ける上部マスト(F3)は1936年以前の形状で、キットの設定時期である1942年当時は長さが短縮されヤードも1本に変更されています。F3は寸法が合わないようなので自作する必要があります。また、クロスツリー(J24)の前端に付ける見張方向盤(F6)は、1936年頃であれば部品の形状で間違いないのですが、1943年に被雷損傷した軽巡名取の写真ではこの部分の形状が異なっているように見えるため、長良も同様に変わっていた可能性は考えられます。

 課程13~15で組み立てる、天蓋に測距儀が付く2つの大型吸気口で、実艦では艦首側に付く吸気口は背が低く艦尾側が高い仕様ですが、キットの取り付け指示は逆になっています。吸気口と測距儀の組み合わせは、課程13でI17+I19+D1を艦首側に、課程14でI17+I20+D4を艦尾側に取り付けます。

 過程21の後部マストの組立で、中段付近に見張方向盤(F6)、その上に探照灯台(J7)を付けるように指示されています。しかしながら探照灯台の位置は戦前に90cm探照灯を二基装備していた時代のもので、1942年当時はもう少し下側に位置するはずです。これも資料がなく確証はないのですが、戦前に同じ仕様だった軽巡名取が、1941年当時の写真では下の見張方向盤を外しその場所に探照灯台が移設されているように見えます。そのため、長良も同様の改修が行われた可能性があるのではないかと考えます。

 過程25で艦橋前機銃座に13mm連装と四連装のどちらかの機銃を選んで取り付けるように指示されています。これは学研歴史群像太平洋戦記シリーズNo.51「真実の艦艇史」に於ける田村俊夫氏の調査に依れば1942年4月11日~5月3日迄の入渠修理の際に換装されたものだそうで、つまりそれ以前の設定とするならば四連装、以降(ミッドウエー・第三次ソロモン海戦)ならば連装を付けることになります。

 課程31で大型ダビッド(I8+I18)を艦尾側左右両舷に取り付けるよう指示されていますが、これは左舷のみ取り付けます。右舷側は前2つと同じ間隔で甲板の縁に0.7mmの穴を開けた上でI9を取り付けます。艦載艇の種類と配置にも疑問がありますが、これに関しては明確にできるだけの資料がありません。

 説明書過程39で94式水上偵察機と夜間偵察機(98式水上偵察機)のどちらかを選択して取り付けるよう指示されています。双方の正確な装備時期はわかりませんが、98式水偵は水雷戦隊の旗艦に配備された機体であることから、長良が水雷戦隊旗艦の任に就いた1942年11月以降の装備ではないかと考えます。ただし、長良は1942年の末に入渠工事で主砲の一部撤去と機銃の増備工事を行ってキットの設定状態から変わってしまうため、もし98式水偵を載せるのであれば、1942年11~12月の極く限られた時期ということになります。ミッドウェー海戦や第三次ソロモン海戦を想定するのであれば94式水偵を載せますが、キットに入っている空冷エンジンの二号タイプの他に水冷エンジンの一号タイプの可能性も考えられます(同時期の重巡鳥海が一号タイプを搭載していたため)。

 以下続きます。

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