雑感:ハセガワ1/350戦艦「長門」(その5)

2007–10–30 (Tue)
 このキットの本質的な問題は些細な外板モールドの有無などではなく、販売対象がいったい誰なのかという点に集約されます。

 1. 知識も技量もあり欲しいものがあれば金銭的な負担もいとわない重度の艦船愛好者
 2. 技量はあるが、知識と時間はない一般の模型愛好者
 3. 知識も技量もないが、生活と時間には余裕がある一般の方

 もし対象が1.か2.であるならば、部品数の多さも価格も納得できます。しかしながら、いくら艦船模型の需要が底上げされているからといって、定価2万/公称部品数900近い組立キットが並べたそばから飛ぶように売れるというのは、とても現実的な観測ではありません。感想1回目の冒頭に「店の顔となるようなキット」と書きましたが、私がこの概要を聞いた時には、極く少数の超マニア向けに、艦船の新規開発を犠牲にしても何十年単位で償却してゆく覚悟で開発したものだろうと捉えていました。その意味での「最終章」であると。

 ところが、その後メーカーの宣伝やインタビューを見聞きすると、どうも超マニアよりも3.の広い一般向けが主なターゲットで、また1/350艦船の新規開発を打ち止めにするつもりも無いように聞こえます。

 もしそうであるならば、彼らは知識も技量もないのですから、知識は説明書や資料などである程度カバーできるとしても、技量はキットの内容で対応するしかありません。それを考えた場合、他の1/350キットでは一体化されたり省略されている甲板上のモールドや艦橋上の各種計器類を別部品にした事は、部品点数を増やして製作の負担と開発費をいたずらに増しただけと言えます(明細は省略しますが、アオシマの重巡高雄を基準に考えた場合、部品数は現行から25%程度削減できます)。また、次の企画を前提にした発売ならば、営業のリサーチに基づき販売対象と設定価格をどこに置くかという点から妥協できる線を探ってゆかないと、いくら内容が凝っていても部品数の多さと高価な設定価格が需要の足を引っ張って、結果開発が止まってしまっては元も子もありません。覚悟の打ち止めと見込みの甘さによる断念では社内的なダメージははるかに異なるはずです。

 もちろん、退職後の団塊世代の方々が引退後の長い自由時間を過ごす手段として、私が思う以上に飛ぶように売れる可能性もありますし、次の企画はこのキットの売れ行きに関係なく出てくるかもしれません。しかし、過去に於いて大型艦船キットの戦略ミスが模型メーカーにも、また艦船模型全体の方向にも少なからず影響を与えてきたという歴史を思うとき、もし仮にこの長門が目標をクリアできたとしても、このままではいずれ致命的な事態に陥るのではないかという強い危惧がぬぐえません。

 これは内容をダウンさせて一般層に迎合するべきと書いている訳ではなく、艦船に限らず他の水準を大きく超える徹底的にこだわったキットというものは、時代流行に関係なく一定数は売れ続けるものです。ただ、それに伴う内容の高度化と価格の高額化で、開発費が早期に回収できる程の売上が期待できないのも、過去の幾つかのキットが実証していることです。ですから、徹底的にこだわるなら極く少数のマニア向けに数十年単位での償却を目指す、もし早期回収で次の企画につなげるつもりだったのなら価格と組み立て易さ(=部品数)を優先して内容面では妥協する、その最も基本的な方針が企画段階で定まっていなかったのではないかと思うのです。


 長々と書きましたが、これは模型全体の話であって、ハセガワの戦艦長門に関しては定価分の価値は充分にありますし、ある程度の組立模型の経験と時間がある方でしたら実艦の偉容を再現できると思います。キットの出来は非常に優れているので不可能という訳ではありませんが、パーツの数が多い事から全く組立模型の経験のない方はもちろん、艦船のキットを作り慣れていない方にもいきなりは辛いのではないかと個人的には考えます。最低でも同社から出ている1/350駆逐艦雪風を塗装(と必要に応じてエッチング)も含めて一通り作ってみて、組立模型と軍艦のコツ、ハセガワの艦船キットのクセなどを飲み込んでから取り掛かった方が良いと思います。

 あと1回続きます。

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コメント

このブログのコメントは一人よがりの考えでまとめた物ですね。何十年も前にも居ましたよ、これダメあれダメと、それも一般販売の模型誌で発表するバカげた模型ライターが。
そもそも模型は趣味の世界なのだから、自分が楽しめればそれでいいのに、それを越えてメーカーにあぁだこうだと言うのは間違っていると思うんですがね。
イヤなら作らなければいいのに、こう言う公の場で掲載するのは良くないと思いますよ?

ハトさん、こんにちは。

 このブログは個人の日記や感想で成り立っていますから、独りよがりと言われればその通りと言う他はありません。ただ、キットの感想に関しては考証面やキットの内容で明らかに問題があって比較的簡単に直せそうなものは、それでより良くなるならそれに越したことはありませんから、気がついた範囲で書いています。前回の高雄のバルジの形状や今回の長門のバルジの表現のように感覚的に違和感があるものは、できる限り形にして捉え方を示すようにしています。本来であれば全部組み上げて示すのがベターですが、なかなかそこまではできないのが辛いところです。

 模型は趣味の世界だから自分が楽しめればいい、というのはその通りです。しかしながら、それはキットを出してくれるメーカーがあってこそです。過去に大型の艦船キットを積極的に出していたオオタキやイマイは既になく、ニチモも新製品が出なくなって既に30年以上の歳月が流れました。タミヤの1/350は80年代中頃で開発が止まってしまい、そのままフジミのWL脱退まで艦船の新作は全く出ない時期が続きました。現在は金型を海外に出す事で開発費はかなり抑えられていると聞きますが、そういう経緯を体験で見ているだけに、特に大型の艦船キットの開発は慎重に方針を定めて内容を(商業的にも)よく練って出して欲しい、1つ外れれば全てが止まってしまうリスクを考えて欲しいという気持ちから書いたものです。

久々に来てコメントをさせて頂きます。
やはり何か勘違いをされているようで?
ディテールが気に入らなければ自分なりに手を加えればいい事であって、それでもって思うようにならない自分の技術を棚に上げてメーカーに文句を言っているだけなんですよ。自分はここが気になってこう表現しましたって言うのならいいのですが。
別にメーカーに頼らずに、フルスクラッチビルドすればいい事だけだと思うんですが?

企業の宿命

はじめまして。

ハトさんへ

>別にメーカーに頼らずに、フルスクラッチビルドすればいい事だけだと思うんですが?

勝手ですねえ!
ならば、あなた自身、ここにコメントする必要などありませんね!
ひとりで作っていれば、いい事だけなのですから(怒)!
メーカーにうるさく注文するのはユーザーの特権!
ユーザーの注文にふてくされることなく答えるのは、企業の義務!宿命!!
それがわからないから、
模型業界が衰退し、
模型人口が減少したのではありませんか?

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現在は1/100初代海王丸の製作を一時休止して、ハセガワ1/350空母隼鷹を製作しています。

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