雑感:アオシマ1/350重巡洋艦「高雄」(その6)

2007–08–25 (Sat)
 最後は資料の紹介を。
 高雄型重巡は公式図が幾つか残存し、また戦前は最も国民に親しまれた艦でもあったために写真も比較的多く残っています。そのため、資料も日本海軍艦艇の中では割と数が出ています。

 価格が高いのが難点ですが、高雄型重巡の資料はこれが決定版です。

 ポーランドの艦船研究家であり著名な模型愛好者でもあるヤヌス・シコルスキー氏の手による図面集で、建造から1944年時までの変遷と装備品の明細を膨大な数の図と一部写真で示した内容です。高雄限定ですが、装備品の多くは他艦と共通で、また大改装前の状態は鳥海や防空巡洋艦に改造される以前の摩耶を作る際にも参考になります。

 モデルアートからも作図集が出ています。詳細はこちらを。
 これは岡本好司氏の手による作図集で、立体図や構造図などを多用した内容です。ヤヌス氏の本ではつかみにくい個々の形状把握が容易で、模型への応用も楽になります。ただし内容は大改装前までの状態を示したもので、このアオシマ高雄のキットで参考になる部分は限られます。むしろ鳥海や防空巡洋艦に改造される以前の摩耶を作る場合により参考になると思います。

 また、モデルアートは艦船模型スペシャルNo.26でも高雄型重巡を取り上げています。

 高雄型は2001年に発行されたNo.2に続く2回目の特集ですが、今回はこのアオシマ1/350キットの製作ガイド(〆切の関係で愛宕・鳥海・摩耶の3艦は高雄からの改造記事)を中心に、畑中省吾氏による同型4艦の時期別の変遷と識別が24pに渡って多数の図版と共に述べられている点が白眉で、非常に参考になります。また、高雄とは別に、衣島尚一氏の連載「軍艦の塗装」ではこれまであまり模型誌では触れる事が無かった信号旗の明細と使用法が、昭和16年度の艦船符字一覧表と共に詳しく述べられており、これも情景を重視する方には不可欠なテキストです。(2007/11/25追加)

 とりあえず高雄型重巡の模型の資料に関しては、上3冊を揃えれば事足ります。



 これは作家の丹羽文雄氏が、海軍の報道班員として重巡鳥海に乗り組み第一次ソロモン海戦に参加し、その直後に発表した従軍記で、艦の日常、戦闘、そして戦いの後を当事者の臨場感あふれる生の言葉で伝えています。模型に直接参考になる図面や写真などはありませんが、当時の艦の「空気」がビリビリと伝わってくる記録で、高雄型重巡、特に鳥海に関心がある方には一読おすすめします。


 写真集は次の2冊が挙げられます。

 左の重巡高雄~(以下、ハンディ版と表記)は実艦の計画建造から改装、戦時中の変遷を写真や記事・艦型図と各艦の行動記録で示した本で、つまり高雄型重巡の全般的な基礎知識がこれでわかります。ただ、21×15cmと小さい本なので、写真が少しわかりにくい難点があります。右は価格が高く、アオシマの高雄だけのために買うのはお勧めし辛いのですが、1頁1隻収録の大判の写真集で鮮明なものが多く、細部のディテールや日本の巡洋艦の魅力が十分に感じ取れます。


 これは太平洋戦争に参加した全ての日本の巡洋艦と未成で終わった計画艦に関して、建造の経緯から戦前戦中の行動記録や改装状況、終焉までの膨大な記録を写真やトレス図を交えながら綴った900p近い超大冊で、残念ながら日本にはこれに比肩する本はありません。非常に高価な洋書でかつ「読む本」ですが、日本の巡洋艦の「特定の艦の特定時期の状態」を探るには最良の資料です。高雄に限らず日本の巡洋艦を数多く作りたいと考えている方には、心強い味方になるかもしれません。



 左は日本海軍関係の資料本の中では定番のシリーズで、摩耶の大型模型の紹介に掲載写真もハンディ版より鮮明ですが、図面はありません。この記事を書いている時点では絶版で、中古価格も決して安くはなく、個人的には上に挙げた資料があれば無理して探す必要はないと思います。



 最後に、キット本体の情報も貼っておきます。

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コメント

Japanese Cruisers of ・・・

ごぶさたしています。たぬきです。
いつも海王丸の制作過程、拝見させて頂いています。「模型の缶詰」の影響を受けて、だいぶ前に1/100日本丸を入手していたのですが、完全に作る気を失ってしまいました・・・。

さて高雄のレビュー、興味深く読ませていただきましたが、資料として洋書「Japanese Cruisers of the Pacific War」を挙げられていたのは意外でした。
amazonで見かけてはいたものの「外国の人が日本のことを調べるのは限界があろう、わざわざ買うほどのことも・・・」と、スルーしていた本でした。
そこの辺り、どうなのでしょうか。
たぶんこのブログの多くの読者の方が、同様の感想を持ったと思われますので、
代表してお尋ねいたします。

Re:Japanese Cruisers of ・・・

 たぬきさん、こんにちは。
 海王丸の製作は最初はここまで厳密にやるつもりは無かったのですが、資料収集の過程でだんだん話が大げさになって引っ込みがつかなくなってしまいました(笑)。ただ、ある程度きっちり作ることができれば、次に何かを作る時はもう少し上手い「嘘」がつけるようになるのではないかと、そんな気持ちはあります。

 Japanese Cruisers...は紹介の文章で書いた通り、太平洋戦争に参加+計画された日本巡洋艦の全貌と言っても良い本です。各艦の行動と改装記録は戦時日誌や行動調書といった日本側の一時資料を基に構成されたものだそうで、いつどこで何をしたのか、個々の入渠工事で具体的に何を加え何を外し何を替えたのかといった事が個鑑別に克明に書かれています。発刊後の調査で不備と判った部分もあり完璧という訳ではありませんが、これほど広範囲な視点から徹底的に掘り下げた資料は日本語の本にも(私が知る限り)ありません。

 かなり高価な洋書で、かつ図版が多いとはいえ上記の理由から読まないと価値が半減するのですが、少なくとも学研の高雄型重巡の古本に諭吉さんを使うくらいなら、この本の方が得るものが多いようにも思います。

 発売されたのはちょうど10年前ですが、開いて読んで仰天したという記憶が強く残っています。それ以来、日本の巡洋艦の各時期の状態を知りたい時はまずこの本から開いています

あつかましくもお願い

MOMOKO.120% さま
日本丸はあきらめたにせよ、いつか大きな船の模型を作ってみたい
と、あらためて思っているたぬきです。
Japanese Cruisers...良さそうですね。欲しくなりました。

初心者にとっては、その世界のパースペクティブをきちんと把握するのが難しく、周りにそれを知る人が居なければ、資料に片っ端から触れるしかないわけですが、洋書だとそれもなかなかうまく行きません。
お忙しいとは存じますが、見た目には模型制作進行の少ない折などに「炉辺談話」として資料に対するMOMOKO.120% さんの知識を開陳していただけると、多くの人が喜んでくれるのではないでしょうか。

フッド制作の際に紹介されたAlan RavenのBritish Battleships of World War Twoは、昨年ようやく手ごろな価格のものを入手することができました。紹介したMOMOKO.120%さんに手を合わせたくなるような大変素晴らしい本でした・・・。

資料は

 自分が見聞きした範囲が主で、これが全てではないとは思いますが、何か参考になれば幸いです。British Battleships of World War Twoは本当に凄い内容で、洋書店の店先で本を開いて両膝がガクガク震えたのを今でもはっきりと覚えています。たぶんこの本が無ければフッドは製作に至っていなかったかもしれません。

 良い資料を探り出す方法の一つに、現在市販されている書籍の「参考文献」をピックアップして、共通して挙げられている頻度の高いものから探してゆくというやり方があります。研究者がみな共通して参照している資料であれば、内容が濃い可能性が高いという訳です。自分の経験の範囲で、ということになりますが、そういった参照頻度の高い資料から先に読んでゆけば、その後に出版される資料がはたして価格に見合うだけの情報量があるのかどうかという事もある程度わかってきますし、取捨選択も楽になるのではないかと思います。

 それと、あまりかしこまらなくても結構ですので(^_^)。

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