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ハセガワ1/350隼鷹を作る(その83)

2019–01–28 (Mon)
 前回の続き。
 製作は艦橋右舷下の通路などを取り付けたところまで。

(本日の画像はクリックすると別窓で拡大表示します)

 この長大な通路は竣工時の公式図には描かれていません。マリアナ沖海戦までに設置されたものですが、それ以前の写真では有無がはっきりしないため、正確な設置時期は不明です。昭和18年6月出図の飛鷹の公式図にも描かれていませんが、この図面は右舷艦橋下の部分が110cm探照灯座を除いて吸排気口等が何も描かれていないため意図的に省いた可能性があり、これを以て未設置の判断はできません。

 そもそも竣工時に無かったという事は、その時点では必要と考えられていなかったもので、後に付けられたとすれば、最も考えられる理由は運用上の問題-すなわちミッドウェー海戦の戦訓に思い至ります。

 以前にも触れましたが、防研資料「発着兵器基地兵器関係」(登録番号⑥技術-兵器-292)の中にある「航空母艦艤装改善ニ関スル方針ノ件仰裁」と題された昭和17年9月22日付の稟議書の写しに於いて、戦訓に伴う航空母艦の艤装の改善点が挙げられています。そして主要事項に対する改善策としてこのような事が書かれています。

一.消防諸施設
  四 其ノ他
  防火ニ當リ作業ヲ容易ナラシムル爲(為)外舷ニ通路ヲ設ク
二.(略)
三.防御甲板以下ニ對スル交通及連絡ノ確保ニ關(関)スル事項
 (二)機械室、罐室ニ對スル非常口及所要隣接區劃(区画)ノ人孔ハ防水ヲ阻
   害セサル範囲ニ於テ電線通路、風路等ヲ利用シテ之ヲ設ケ非常ノ
   際ノ交通ヲ確保ス

 ミッドウェー海戦では4空母がいずれも爆撃による火災を鎮圧できずに喪失に至りましたが、証言に共通する事として前後方向の交通がままならなくなり生存者は艦首または艦尾甲板に追われていった点が挙げられます。そして機関部との連絡や交通が途絶したために艦の放棄を余儀なくされ、機関部員の脱出が果たせず多くの犠牲者を出す結果にもつながりました。

 これらの事から、隼鷹の艦橋右舷下の通路(部品No.K29,34,35,専用エッチングA-MA243,244,248~250)はミッドウェー海戦の戦訓による消防対策の一環として設けられたもので、設置時期も南太平洋海戦の前後の比較的早期に実施されたのではないかと考えます。

 また艦橋下の後部、右舷発電機室排気路の下に短い通路(部品No.K32,33,専用エッチングA-MA245~7)がありますが、これも竣工時の図面には描かれていません。戦後の写真をよく見ると通路から排気路に向けて梯子が付けられているのがわかります。

学研「空母大鳳・信濃」より

 上で引用した航空母艦艤装改善ニ関スル方針ノ件仰裁の対策事項の中に、風路等を利用して機械室や缶室の非常交通路を確保するとあります。そのため、この張り出しも排気路を利用した艦底からの非常交通路の一環として比較的早期に設置されたのではないかと考えます。この製作ではいずれも設置済と判断して付ける事にします。




 キットにはこれらの通路が専用エッチングとして用意されていますが、手すりはごついので他と同様にレインボーのものと取り替えています。また通路の下部サポートは細い支柱を三角形に組み合わせた形になっていて、キットの専用エッチングにも部品はあるのですが、どうも写真から受ける印象よりも若干小さめで表現的にいまいちな感じがしたため、0.25mm真鍮線を組み合わせて本当はこんな面倒臭い事はやりたくなかったのですが後方下の通路の下部部品を飛ばして無くしてしまったので仕方なく作り直しています。


 艦橋下後部の通路は先に述べたように艦底からの非常脱出路として設けられたのではないかと考えます。キットは外板や舷外電路のモールドの位置関係が微妙にずれていて、実艦写真と比較すると取付指定位置がやや下側になるようです。そのためキットのモールドに従って付けた近辺の舷外電路を一旦剥がし、1.0mmほど上方に付け替えて通路が指定位置より若干上に付くようにしています。これも同様に下部サポートを真鍮線で付け替えています。

 以下次回。




ハセガワ1/350隼鷹を作る(その82)

2019–01–21 (Mon)
 前回の続き。

(本日の画像はクリックすると別窓で拡大表示します)

 製作は艦首から手すりと残っている張り出しなどの取り付けに掛かっています。


 隼鷹の竣工時の公式図では手すりの種別が鋼棒とチェーンで区別して描かれています。この製作ではそれに従い区別する事にします。前回の記事で書いた通り支柱はタミヤのハンドレールセット、チェーンは0.05mm銅線を二本ねじった線、鋼棒は0.1mm真鍮線をそれぞれ使用しています。


 単一表現の手すりエッチングと異なり、タミヤのハンドレールセットはこのように通すものによって表現の区別が出来ますが、支柱の部分がどうしてもごつく見えるというデメリットもあります。これは仕方がないので、どの表現を優先するかで決めれば良いと思います。

 上の画像の高角砲甲板の上の小さな張り出し(部品No.J9)は、公式図では軽質油管用球形弁操作フラットと書かれている部分で、詳細はわかりませんが、作業員控所にあったと考えられる艦載機給油用の軽質油弁を一元管理する部署ではないかと考えます(積込用の作業フラットは1,2枚目の画像のエッチングの張り出しの部分になります。軽質油弁については飛行甲板まで作業が進んだ時にまた述べます)。 この部分も含めて上部または小型の作業フラットは変化を付けるために極細でやや間隔が狭いレインボーモデルのタイタニック用手すりエッチング(Rb4001)を使用します。

 以下次回。

ハセガワ1/350隼鷹を作る(その81)

2019–01–13 (Sun)
 前回の続き。

 船には測深儀という装置があります。入出港や沿岸航行の妨げにならないよう海底までの深さや表面の地質を調べるもので、太平洋戦争の頃には主にワイヤーを海底に降ろして直接測る電動測深儀と船底からの音波による音響測深儀の二種類がありました。

画像右:手動測深儀 左:電動測深儀
(東京海洋大学百周年記念館所蔵品)
(本日の画像はクリックすると別窓で拡大表示します)

 このうち電動測深儀は測深儀とワイヤーを展開するブームがセットになっていて、ブームが図面か写真に写っていればその近辺に本体があります。また音響測深儀が(外観からは見えない)艦底に装備されていれば必ずしも設置されている訳ではないようです。隼鷹は竣工時の公式図で電動測深儀2組と音響測深儀1組が装備されていたようです。


 電動測深儀は比較的目立つ装置ですが、非常に小さなもので製品化されているものは私が知る限りありません。それで手持ちのエッチングを切り貼りしてそれらしいものを作りました。


 本体の製作は手すりや専用エッチングの張り出し、作業員待避所などを取り付けてゆきます。まず右舷側の短艇甲板の手すりを貼ったところまで。タミヤのハンドレールセット(12642)で取り付け方はこちらこちらに書いた通りですが、チェーンの代わりとして0.05mm銅線を二本ねじった線を通して上の作業員待避所の棒手すりと変化を付けています。また高角砲台座のそばにある棒状のものは上記の電動測深儀用のブームで、終戦後の写真にも写っています。

 以下次回。

ハセガワ1/350隼鷹を作る(その80)

2019–01–06 (Sun)
 新年あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願い致します。



 前回の続き。

(本日の画像はクリックすると別窓で拡大表示します)

 隼鷹の竣工時の公式図では艦橋前の4.5m測距儀の前方に8cm双眼鏡用の張り出しが描かれています。ところがその前に機銃座が増設されると機銃の上方を覆う形になってしまうので、何らかの対策が成されたものと考えられます。


 増設された機銃座が描かれている昭和18年6月出図の飛鷹の公式図では、この部分は上記のように描かれています。8cm双眼鏡用張り出しの位置が隼鷹の竣工時よりも右舷寄りで、かつ少し高い位置にあることは以前に述べました。この時は隼鷹と飛鷹の識別点の一つと考えていたのですが、機銃操作の妨げにならない措置ならば隼鷹も同様に改装された可能性があります。一時はそう判断して機銃座を弾薬供給所のところで切り離して取り付けました。

 しかし、老猿さんのブログ「海に憧れる山猿」を再度読み直し、マリアナ沖海戦には単装機銃が装備されていた弾薬供給所後方の張り出しが、艦橋側に竣工時には無かった窪みがあることから最初から機銃用に設けられたものではなく、4.5m測距儀前の8cm双眼鏡をここに移設したのではないかという考察には合理性があります。


 南太平洋海戦~昭和18年当時の隼鷹でこの部分を明確に示した写真や図面はなく、散々悩んだのですが、結局老猿さんの考察に従って一旦切り離した張り出しを再度取り付けました。ブルワークは他と同じくプラストライプで付け直し、また下部の複雑怪奇なサポートもキットの部品はやや表現が弱いので少し手を入れています。また上記の飛鷹の図面では空中線支柱は隼鷹の竣工時と同じ形状ですが、これはマリアナ沖海戦の仕様(キットの状態)とします。

 上記の飛鷹の図面には機銃座の前方に棒が描かれています。これは隼鷹の竣工時の図面に「操舵目標桿」と記載されているもので、用途に関する資料や文献はありませんが、隼鷹型航空母艦の艦橋はこれまでの空母よりも大型でかつ船体から右舷側に張り出している事と、装備位置が操舵室の中心線上にあることから、進路方向を把握し易くするために設けられたものではないかと考えます。マリアナ沖海戦直前の隼鷹の艦上写真にも写っていますが、高さは図面より約2.5mほど短縮されています。


 写真から艦橋前の機銃の障害であるのは明白なので切り詰めたようですが、ならば機銃増設後の飛鷹の図面が空中線支柱も含めて隼鷹の竣工時のままとなっている点には疑問があります。しかしながら飛鷹は残されている写真がほとんどなく現状では確かめようがありません。


 操舵目標桿はキットの部品も専用エッチングにも無いので金属パイプと真鍮線で作ります。形と位置だけ決めて取り付けは最後の段階で行います。

 以下次回。
 なお今回の再考察や老猿さんの考察で反映されていなかった部分を含めて、覚え書き(2)に於ける隼鷹と飛鷹の艦橋前4.5m測距儀周辺の変遷図を一部書き換えています。

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MOMOKO.120%

Author:MOMOKO.120%
職業:自営業見習い
趣味:ブログの通り
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現在は1/100初代海王丸の製作を一時休止して、ハセガワ1/350空母隼鷹を製作しています。

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