飛鷹型航空母艦に関する覚え書き(6)

2017–02–18 (Sat)
 大戦初期の空母艦上機のマーキングは以前に述べましたが、日の丸の表示に関しても艦船の資料では今ひとつはっきりしない部分があるのでここで少し整理してみます。

 零戦に関しては昭和18年春頃まで明灰緑色一色だった関係で、日の丸は縁無しが基本だったと考えられます。ただし学研「零式艦上戦闘機2」によれば昭和17年6月頃から中島製の零戦21型に関しては胴体の日の丸に白縁が付けられるようになったとあり、以前に述べた日本ニュース第145號 「海鷲南海の索敵」にも胴体に縁有り無しの機体が混在して映っています。

 97艦攻と99艦爆は少し複雑です。まず開戦の真珠湾攻撃には多くの写真や記録映像が残っているので迷彩の有無に関係なく白縁無しの日の丸であることがわかります。


写真日本の軍艦3巻p175より
 昭和17年4月のインド洋作戦当時とされる瑞鶴の99艦爆の写真。上面が濃緑色で迷彩塗装され、翼上面と胴体の日の丸に白縁が付けられている事がわかります。


日本ニュース第99号「トリンコマリ洋上で敵空母を撃沈」(昭和17年4月28日公開)より
 一方で同じインド洋作戦時とされる赤城の97艦攻の映像では、開戦時と同じ上面胴体共に白縁のない日の丸のままです。


映画「帝国海軍勝利の記録」(1942)より
 この映画には時期は不明ながら胴体に白縁付き日の丸を付けた99艦爆が赤城から発艦するシーンが映っています。赤城の99艦爆のうち少なくともミッドウェーまでに上面濃緑色迷彩で白縁付き日の丸に塗装が替わった機があることを示しています。


丸スペシャルNo.94「ミッドウェー海戦」p85より
 ダッチハーバー攻略時とされる龍驤の97艦攻の写真ですが、胴体と翼下面に白縁付きの日の丸が描かれています。また開戦時に見られた97艦攻の翼下面に機番号の下二桁を描くマーキングは、(写真の説明が正しければ)少なくとも龍驤では昭和17年6月の時点でも継続されていた事になります。なお、元の写真ではこの機体は当時主力として用いられた三号艦攻ではなく、カウリングの形が異なる一号艦攻として写っています。



⑤⑥共にビデオ「日本海軍艦艇集【下】」より
 いずれも瑞鶴写真班が作成した「南太平洋作戦」と題されたフィルムからですが、胴体と翼上面に白縁がある機体と無い99艦爆が映っています。共に正確な撮影時期は不明ですが、どちらの機体も存在したことはわかります。また⑥の青矢印で、この機体は水平尾翼の偏流測定線が昇降舵の手前で切れているのがわかります。


日本ニュース第127号「南太平洋海戦」(昭和17年11月10日公開)より
 翔鶴を発艦する99艦爆ですが、翼の下面の日の丸には白縁がありますが胴体には付けられていません。この映像では翼の上面の白縁の有り無しはよくわかりません。


軍用機メカシリーズ11「彗星/九九艦爆」p98より
 昭和18年4月ラバウルに於ける隼鷹の99艦爆(22型)とされる写真。翼の下面に白縁がありますが、胴体にはありません。この写真も翼上面の塗装はわかりません。

 これらの写真や映像を並べて考えてみると、97艦攻と99艦爆の日の丸は開戦時の白縁無しから白縁あり、そして胴体は再び白縁無しとなる流れが見えてきます。ただし艦や時期にもばらつきがあることから、規定で一律に替わったものではなく、艦ごと、あるいは機体ごとの事情で違いが出たのかもしれません。それは最初に述べた零戦の胴体の日の丸が三菱製と中島製で白縁の有り無しが混在している事例からも推察できます。

 昭和17年の秋に「軍用機味方識別に関する海陸軍中央協定」が定められ、軍用機のマーキングに規定が加わります(協定文上の実施日付は昭和17年9月15日、ただし各部隊への通達周知の関係でタイムラグはあったようです)。これによって翼の前縁に黄色の識別帯が描かれた事はよく知られていますが、それ以外にもこんな内容があります。

迷彩セル飛行機ハ胴体両側ノ日ノ丸標識ヲ方形国旗標識(日ノ丸外切スル白部ハ七五粍以上)トシ若ハ日ノ丸標識ノ周囲ニ幅約七五粍ノ白輪ヲ描ク

 しかしながら、写真⑦⑧の協定以降とされる空母艦上機の映像や写真には胴体の日の丸に白縁が無いものがあります。特に⑧の写真説明が正しければ協定から半年以上経過しても内容通りには塗装されていなかった事になりますが、この事情について述べた資料はどうも見当たらず、理由は全くわかりません。




映画「海軍戦記」(1943)より
 上述の海陸軍協定以降に塗装されるようになった主翼前縁の敵味方識別帯は、母艦同士の戦闘が想定される状況では消したとする資料もありますが、少なくとも南太平洋海戦当日は付けたままである事がこの瑞鶴機からホーネットを捉えた写真でわかります。これよりわずかに角度が違う写真が幾つかの資料にも掲載されています。




 前回の記事で翼上面を白縁付きの日の丸とした99艦爆ですが、⑥~⑧の写真から翼上面と胴体は白縁無し、翼下面のみ白縁ありとしました。また水平尾翼の偏流測定線の範囲も昇降舵の手前までとしています。

ハセガワ1/350隼鷹を作る(その14)

2017–02–12 (Sun)
 前回の続き。

(この画像はクリックすると別窓で拡大表示します)

 必要10機中8機まで形になりました。あと零戦2機が残っていますが、レインボーの風防枠エッチングの手持ち全てを使い果たしてしまい、見る限りどこも在庫を持っていないようなので、入手できるまで保留とします。


 艦上機は共にあまり上手くはできませんでしたが、これで切り上げます。翔鶴の記録写真から南太平洋海戦当時の敵味方識別帯は戦争末期より幅が広かったようなので、そのように仕上げています。また奥は中島製零戦として胴体の日の丸に白縁を入れています。写真でははっきり見えませんが、一応フラップも下げた状態で、プロペラの裏側は茶褐色としています。


 99艦爆の風防枠は結局BIGBLUEBOYの1/350艦上機用エッチングセット(No.35034)を用いました。後でも述べますがこの製品はレインボーに比べて処理がしやすく、一個も失敗することなく取り付けられました。写真に撮った後で気が付きましたが、風防の前の射爆照準器が抜けていたので後で付けておきます。また手前の機はいつの間にか胴体の日の丸のデカールが取れてしまっているのでこれも付け直します。



 空母専用エッチングに於いて、ハセガワもフジミも艦上機に関してはプロペラブレード程度しか入っていないので、手を入れるならば外部エッチングに頼る事になります。しかしながら現在入手可能な1/350空母初期艦上機専用エッチングは、共にハセガワ向けのレインボー(Rb3516)とBIGBLUEBOY(No.35034)の2種しかないようです。

 個々の内容は通販サイト等の製品画像を見ればわかるので省略しますが、レインボーは例によっての紙細工でのりしろもほとんどなく、取り扱いはやや難しい面があります。BIGBLUEBOYはそれよりは扱いやすい印象ですが、零戦の風防枠が今ひとつ特徴を捉えていない上にコックピットや99艦爆の射爆照準器のパーツが無いなどまさに一長一短の感があります(風防を透明化すれば開けない限りコックピットはただの穴でもまずわかりませんが)。今回は数機レベルなので両方取りという形を取りましたが、数十機となるととても財政が持ちません。まず両方で一機作ってみてどちらかに割り切って選ぶのが現実的な選択肢ではないかと考えます。

 なお零戦の風防枠に関しては、レインボーは若干大きめ、BIGBLUEBOYは若干小さめで混在はできません。この製作ではレインボーの枠を用いていますが、後端が胴体とフィットしにくいようです。BIGBLUEBOYは大きさ的にはキットの風防に近いのですが、高さが低いために前端の傾斜も浅くなり、前面の印象が今ひとつの印象です。



 これで一通り作れる装備品は出来たので、ようやく本体の製作に入ります。ただし次回からしばらくは艦上機と艦について少し補足を書くことにします。
 以下次回。

ハセガワ1/350隼鷹を作る(その13)

2017–02–04 (Sat)
 前回の続き。

(この画像はクリックすると別窓で拡大表示します)

 零戦6機分のマーキングまで。胴体の黄帯二本と垂直尾翼の機番号、翼前縁の敵味方識別帯はMD5500による自作、他は既存のデカールを使用しています。写真に撮ってから気が付きましたが、翼の上の赤枠の形が異なっている(四角ではなく胴体に対してコの字)のでこれは修正しておきます。

 6機のうち4機を三菱製(胴体日の丸白縁なし)、2機を中島製(白縁あり)としました。南太平洋開戦当時がどうだったか資料はありませんが、状況的に混在していたのは間違いないので、変化を付ける意味も兼ねてこうしています。

 前回の記事で敵味方識別帯は付けないと書きましたが、その後資料を整理したところ海戦当日も付けていたようなので付ける事にしました。詳しくは艦上機ができた後にまとめて述べる事にします。

 以下次回。

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MOMOKO.120%

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現在は1/100初代海王丸の製作を一時休止して、ハセガワ1/350空母隼鷹を製作しています。

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