軽巡球磨と鬼怒に関する覚え書き(その3)

2014–10–25 (Sat)
 前回の続き。

 昭和18年6月の艦載機パラオ派遣の代替として球磨に派遣されていた零式観測機1機は9月12日に撤収され、以降16戦隊の軽巡に艦載機は1機も無くなります。

第十六戦隊戦時日誌(昭和18年9月分) Ref.C08030056500 より

発9月11日0802 16S司令官
受 球磨飛行機(GKF空廠第一支廠) 球磨艦長
16S機密第二〇八〇二番電
一.球磨搭載観測機ハ十二日中ニ「リンガ」泊地ニ回航スベシ
二.球磨整備員ハ(在昭南)ハ次回便アリ次第「リンガ」泊地ニ来レ

 これに対して16戦隊は南西方面艦隊に派遣された水偵の復帰を求めました(電文省略)が、結局戻ってくることはありませんでした。

一.経過
(ハ)作戦指導並ニ実施
(五)其ノ他
三十日 連合艦隊伝令作第七二三号ニ依リ 連合艦隊伝令作第六〇〇
    号ニ依ル「パラオ」派遣飛行隊ノ編成ヲ解カレ鬼怒、球
    磨ノ九四式水偵各一機ハ九〇二空ニ移管スルコトトナル

 なお、この記述でパラオに派遣するまでの球磨と鬼怒の搭載機が94式水偵だった事がわかります。


 呉工廠で先の損傷修理と高角砲や機銃・電探などの増設を行った鬼怒は10月26日にシンガポールに入港し戦列に復帰します。多くの資料には鬼怒はこの改装でカタパルトとデリックを撤去したと書かれていますが、呉式二号三型から五型に換装し撤去は行っていません。

 この改装工事後の状態を示した一般艤装図が大和ミュージアムの公開資料にありますが、カタパルトとデリックは描かれています(トレス図が艦船模型スペシャルNo.29 5500トン型軽巡に有)。またこの艤装図には零式三座水偵が描かれていて、その搭載を前提とした換装だった事が推察できます。それは以下の電文からも裏付けられます。

同(昭和18年11月分) Ref.C08030056700 より

発11月6日1345 16S司令官
受 GKF長官[GF長官 931FG<航空隊> 932FG]
16S機密第〇六一三四〇番電
当隊戦力発揮上是非必要ニ付当隊機密第二七一六二二番
電(十月)上申ニ依リ飛行機搭載時期迠<迄>鬼怒ニ零式水
偵一機(搭乗員整備員共)臨時搭載方御配慮ヲ得度
尚鬼怒ノ射出機ハ零式水偵可能ナル如ク換装済ミ

 改装工事直後の鬼怒はカタパルトを換装したものの、この時点では艦載機が割り当てられていませんでした。この電文に対しても2日後に南西方面艦隊参謀長から手一杯で回せる水偵はない旨の返信が送られています。また、呉式二号三型カタパルトでは零式三座水偵を運用できない事がこの電文からも伺えます。

 以下次回。

軽巡球磨と鬼怒に関する覚え書き(その2)

2014–10–18 (Sat)
 球磨と鬼怒の艦載機の状況が変わったのは昭和18年6月で、連合艦隊は麾下の艦隊の水偵を南洋部隊に集約し、対潜掃蕩と船団護衛に当てる命令を出します。

第十六戦隊戦時日誌(昭和18年6月分) Ref.C08030056000 より

発6月21日1415 GF<連合艦隊>司令長官
受6月21日1850 GF各司令長官 各司令官 (<軍令部>総長)
GF機密第二一一四一五〇〇番
連合艦隊伝令作第六〇〇号
1.各指揮官ハ概ネ七月五日迄ニ左ノ兵力ヲ南洋ニ派遣
 同地着後内南洋部隊指揮官ノ指揮下ニ入ラシムベシ
2.大和14S<戦隊>阿武隈16S香椎青葉川内搭載水偵全機
[以下略]

 これに対して16戦隊は異議を答申します。

発6月22日1705 16S司令官
受6月22日 GKF<南西方面艦隊>参謀長(GF参謀長)
16S機密電第二二一七〇五番電
GF伝令作第六〇〇号関連
当隊搭載機ハ当隊今後ノ作戦行動上是非欠クベカラザルモノナルヲ以テ
派遣取止ノ方配慮ヲ得度

 南西方面艦隊は代替案を検討します。

発6月23日1150 GKF参謀
受6月23日1600 16S参謀
GKF機密第二二一一三〇番電
鬼怒及球磨ニ零式水偵及観測機搭載ノ能否知ラサレ度

 ところがこの電報が発せられた時刻に、セレベス島マカッサルに集結していた16戦隊の軽巡4隻はB24爆撃機の空襲を受け、鬼怒が損傷し修理のために戦列を離れる事態になります。

発6月23日1805 16S参謀
受6月22日 GKF参謀
16S機密電第二三一八四〇番電
GKF機密第二三一一三〇<原文ママ>番電返
射出機ノ使用不能ナルモ観測機ナラバ搭載可能ノ見込
尚貴地入港次第搭載実験致シ度

 結局27日に球磨と鬼怒の艦載機のパラオ進出が下令され、代わりに聖川丸搭載の零式観測機1機と人員が球磨に派遣されることになります。

発6月28日0830 聖川丸艦長
受6月28日1140 16S司令官 球磨艦長 23abg<特別根拠地隊>司令官
(GKF 2KF<第ニ南遣艦隊>長官)
聖川丸機密第二八〇八三〇番電
球磨ニ搭載ノ為0900「スラバヤ」発1230頃「マカッサル」着ノ予定ニテ
観測機一機派遣ノ予定


 以下次回。

軽巡球磨と鬼怒に関する覚え書き(その1)

2014–10–11 (Sat)
 次は球磨と鬼怒に関して、残存する第16戦隊の戦時日誌から艦載機とカタパルトの装備を追う事で、空母及搭載艦関係報告資料の「二艦分の」信憑性を推察することにします。模型用の資料では共に94式水偵を搭載、球磨は最終状態に於けるカタパルトの有無は不明、鬼怒は昭和18年の改装でカタパルトを撤去としているものが多いようです。


 本論に入る前に、引用する防研史料閲覧室の別の資料について、少し長くなるのでここで説明します。

 戦後、第ニ復員局がまとめた旧海軍関連の資料の中に「飛行機搭載艦編成表及び飛行機定数表」というものがあります。これは開戦から終戦までの部隊編成と、配備された航空機の定数を示した一覧表で、模型誌などで艦載機の変遷について書かれた資料の多くはこれが元になっているようです。ただし航空機の記述は具体的な機種名ではなく、二座水偵・三座水偵・夜偵といった大まかな種別に留まっているほか、複数の5500トン軽巡への夜偵搭載や大戦末期の搭載機数など実際の配備状況とは異なっている場合があり、内容には精査が必要です。

 資料は無印(母艦以外の艦載機搭載の水上艦艇)、内戦部隊(国内陸上基地)、外戦部隊(航空母艦及び国外陸上基地)の3部冊から成ります。ここで引用する無印編について、資料閲覧室には以下の資料が存在します。

登録番号史料名部署等
①中央-編成-71S.16.12~20.8 飛行機搭載艦編成表及
飛行機定数表 1/2
第ニ復員局
①中央-編成-72S.16.12~20.8 飛行機搭載艦編成表及
飛行機定数表 2/2
第ニ復員局
⑤航空関係-全般-103飛行機搭載艦編成表及飛行機定数表史実調査部
⑤航空関係-全般-104飛行機搭載艦編成表及飛行機定数表史実調査部
⑤航空関係-全般-105飛行機搭載艦編成表及飛行機定数表
昭和16年12月~20年8月
史実調査部

 史実調査部とは第ニ復員局で旧海軍の資料収集と編纂に当たった直接の部署で、下三つの103~105はそれぞれ内容が若干異なります。103は印刷されていますが所々に赤字で修正が入っていて、昭和20年3月1日付の表が最後です。104と105は手書きの文書で共に103の修正が反映されていており、内容はほぼ同一ですが104は昭和20年8月15日付が最後、105は20年5月1日が最後で「20年5月25日以降飛行機搭載艦ナシ」の注釈で終わっています。

 ここでは105の内容を参照し、「定数表」と表記します。なお第ニ復員局名義の上2冊は滞在時間の関係で確認できませんでしたが、少なくともこれから述べる球磨と鬼怒に関した部分に関しては恐らく同じ内容ではないかと考えます(後日再確認の機会が得られて異なるようならば修正します)。


 球磨と鬼怒の開戦時の艦載機について、直接裏付ける資料は手元にはありません。後述する電文で昭和18年6月にはそれぞれ94式水偵×1であった事と、定数表では昭和18年まで三座水偵×1となっているため、開戦時から昭和18年6月までは94式水偵×1だったと推測されます。鬼怒に関しては丸エキストラ戦史と旅No.26の名取南方作戦の写真の中に、昭和17年4月中旬にマカッサルで撮影されたとする鬼怒の写真が掲載されており、ここには94式水偵が写っています。そのため、鬼怒の艦載機は開戦時から昭和18年6月までは94式水偵×1だったと考えられます。

 タミヤの1/700鬼怒のキットには98式夜偵が付属していますが、太平洋戦争を通じて鬼怒は水雷戦隊旗艦の任に付いたことはなく、定数表にも夜偵搭載の記述はありません。従ってこれは明確な誤りのようです。球磨の95式水偵に関しても戦前には搭載した写真がありますが、開戦前に94式水偵に改められたようです。

 以下次回。

短信

2014–10–04 (Sat)
 前回の記事で次は球磨と鬼怒の話と書きましたが、1回お休みして連絡事項などを幾つか。

 このブログの運営会社に対する昨今の報道は御存知の方もあるかと思います。現状問題になっているのは動画サービスでブログではありませんが、ネット上のサービス、特に無料系は運営の都合である日突然消滅する事も無いとは言えません。少し前からブログ内検索が表示されないなど若干の不具合も残っています(機能するようになりましたが、タイトル一覧から記事の直接表示に仕様が変更されています)。もし万が一にも突然接続不能といった事態に陥った場合は、放置状態の本サイトのトップで以後の対応を連絡するつもりです。



 長らく記事がない1/100海王丸に関しては、船体の修正が大規模になることからやり方を検討している状況です。今のところ撤退は考えていませんが、今後もかなり厳しい製作が続くだろうと見ています。これに関しては年内に現状を書くつもりです。



 平均寿命までまだまだ余裕があるとはいえ、精神力が何事もかつてに比べて続かなくなり、家族や親類縁者にも模型を趣味とする者がいないので、この先作れそうも無いキットはあまり抱え込みたくはありません。100%作る可能性がないウォーターラインの旧キットやエレール・レベルの帆船以外のキットなどは近年迄にほとんど手放しました。とはいうものの、生産の一時休止などで市場に無くなってから急に欲しくなる事もあり、再販は当分先と読んで多少割高なコレクション品を求めた後に再販決定の広告を知る事もままある訳で、どうすべきかなと思案しているこの頃です。

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MOMOKO.120%

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趣味:ブログの通り
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現在は1/100初代海王丸の製作を一時休止して、ハセガワ1/350空母隼鷹を製作しています。

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