救命ボートの製作(その3)

2012–06–30 (Sat)
 前回の続き。


 それらしい原型が出来たので型を取ります(上の画像は左側が船首になります)。あまり複雑なモールドを付けても上手く複製できないため、必要最低限に留め残りは複製品ができた後に付け加えます。また内側の側面は底に敷板を入れる関係でモールドは付けていません。


 型取りの材料。左からシリコンゴム1kgとその硬化剤、及び粘土。この他に枠を作るためのブロックと底板、及び離型剤を用意します。シリコンはウェーブのSG-070という流動性の高い製品を使用します。本来はフィギュアの髪など繊細なモールドでかつ抜き方が複雑なものに主に用いられる製品で、今回の救命ボートのような単純なものであれば流動性の低い汎用向けで良いのですが、小さくモールドが微細な艦船用部品の複製にも適しているため、後の事も考えてこれを使います。

 ウェーブのシリコンは以前は金属製の缶でしたが、最近このようなプラの容器に変わったようです。しかしながら蓋の開け閉めが楽になった程度で、硬化剤を混ぜるためのカップに移した後のシリコンのキレも良くなく、蓋の締まる部分が拭き取ってもベタ付くなど、使い勝手は缶の時よりもむしろ悪くなった印象があります。


 まずブロックで枠を作り、底板に枠を固定するための両面テープを貼り、その内側に伸ばした粘土を貼り付けます。次に原型を逆さに乗せ、隙間が出来る部分を粘土で埋めると共に、型が凹凸で噛み合うように原型の周囲に穴を付けます。外側に埋め込んでいる丸プラ棒は合成樹脂を流し込む時の空気抜きの穴になります。最後にブロックで作った枠を乗せ、内側と外側をガムテープでしっかり固めます。通常のシリコンであればテープを貼る必要はありませんが、このSG-070の場合は水のようにブロックの隙間まで良く流れ込むため、このように厳重に固めます。


 シリコンを紙コップに小分けし、硬化剤を規定の割合で入れてよくかき混ぜます。硬化剤は多すぎるとシリコンが劣化してすぐ割れ、少なすぎるといつまでたっても固まらないため、それぞれの量は計った上で混ぜます。混ぜる際に空気が混入するため、混ぜ終わった後に食品保存用の真空容器の中に入れて上からポンプで空気を抜くと、上の画像のようにシリコンに混入していた空気がブクブクと抜けてゆきます。泡が出なくなったら容器から出して枠の中に注ぎ込みます。


 このシリコンの硬化時間は目安8時間ですが、今のような気温の高い時期ならば6時間程度で固まります。硬化したら底板を外すと粘土ごとベリっと剥がれます。剥がれたらシリコンに残っている粘土を取ってブロックの上に継ぎ足す形で枠を作り、内と外をガムテープで固めます。


 ここに再びシリコンを流しますが、このまま流すとシリコン同士が結合してしまうため、結合防止用の離型剤を表面に塗っておきます。

 以下次回。

救命ボートの製作(その2)

2012–06–19 (Tue)
 それほど進展はありませんが、もう2週間以上更新が滞っているため現状報告。


 救命艇は当初キットの部品の切り貼りで試行錯誤していましたが、どうにもならなかったため一から全て作る事にしました。


 プラ材の塊を前にああでもないこうでもないと、切ったり貼ったり削ったり盛ったりして何とかそれらしい形が出来つつあります。圧倒的にキットの種類が少なかった昔は作りたい船はこうやって作るしか無かったのですが、何年経ってもこのような造形はなかなかままなりません。あまり複雑なディテールを付けると後の複製の際に樹脂が欠ける原因になるため、シンプルな基本形に留めます。

 表面の整形が終わったら型取り複製に移ります。
 以下次回。

救命ボートの製作(その1)

2012–06–03 (Sun)
 まずは実船の救命ボートの概要から。

 操端艇とも呼ばれていた初代海王丸の救命ボートは、長さ7.5mのものが6隻搭載され、右舷船首側→左舷の順に1号から6号の番号が振られていました。全て同じものではなく、救助艇と呼ばれる発動機付きの自走ボートを1隻装備することが法律で義務付けられていました。これはフォアブリッジ右舷側の1号艇で、残りの5隻が発動機を持たないオールや帆で動く救命艇です。船に搭載される救命ボートは非常脱出装置であると同時に海難救助や船同士の連絡などにも用いられるため、その運用をマスターするのは練習船のカリキュラムの中でも重要な事柄です。広い洋上でボートに乗り移って離れて初めて目にする、本船の全体像の美しさと小さなボートとの対比は、実習カリキュラムの中でも特に強い印象を与える事柄の一つだったと聞きます。

右舷側の救命ボート(赤矢印)は船首から1号・3号・5号艇です。
従って反対側は2号・4号・6号艇になります。
(2011年7月18日撮影)
(本日の画像はクリックすると拡大表示します)

 これらの救命ボートは一定期間毎に更新され、入渠工事仕様書の記述などから、初代海王丸に於いて最後に更新されたのは以下の時期と考えられます。

1号発動機付救助艇 1975年8月製造、同年秋更新
2号救命艇  1982年9月製造、同年秋更新
3号 〃   1982年3月製造、同年春 〃
4号 〃   1985年3月製造、同年春 〃
5号 〃   1981年3月製造、同年春 〃
6号 〃   1980年3月製造、同年春 〃

 このうち1号救助艇は銘板が無いため確認できませんが、後の2~6号救命艇に関しては残存している銘板の製造日と一致するため、現在の保存船に搭載されているものが現役当時のオリジナルのようです。最後に更新されたこれらの救命艇は船体が木製からFRP製に替わり、形状も救助艇と見た目同じような形になりました。従って、初代海王丸の80年代前半に撮影された写真はこの各救命艇の形状でおおよその撮影時期が推測できます。

右:更新前(1983年4月23日撮影)と左:更新後(2011年9月1日)の4号救命艇
船首及び船尾の形状やビルジキールの仕様などが異なります。
また、更新前の救命艇はカバーが掛けられている舷側上縁部が木地無塗装です。

4号救命艇の銘板
石原造船所製、長さ7.50m×幅2.50m×深さ1.05m、
定員40名、載貨容積13.603立方m、総重量4930kg、製造日1985年3月

 ちなみに、横浜の初代日本丸は引退が海王丸より5年程早かった関係からか、現在の保存船を見る限りではFRP製の救命艇は左舷中央の4号艇のみのようです。また1976年の米建国200周年記念帆船パレード当時の写真を見ても外舷上端の塗装の有無が艇によってバラバラで、80年代前半の海王丸と同様に常に全てが同一仕様では無かった可能性がありますが、救命ボートの換装時期は成山堂書店刊の五十年史にあまり記載がなく、詳細はわかりません。



 キットの設定時期である1975年秋頃に於いて、救命艇の部品は側面形は似ているものの、全長・全幅共に短いため、厳密を期するなら修正が必要になります。また1号救助艇は平面型の幅の不足に加えて重力式ダビットの幅が実船より狭い関係で長さが6mm近く不足するため、これも厳密を期するならダビット共々修正が必要です。

 本製作では全救命艇更新後の1985年春が設定時期で、上で述べたように形状が全く異なり部品を修正してどうにかなるレベルではないので、原型を一つ作った上でシリコンで型を取って複製することにします。

 以下次回。

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MOMOKO.120%

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現在は1/100初代海王丸の製作を一時休止して、ハセガワ1/350空母隼鷹を製作しています。

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