昭和18年7月下旬の軽巡阿武隈に関する覚え書き(補足)

2012–02–29 (Wed)
 以前にまとめて述べた際に保留とした事柄について。

 タミヤ1/700WLとアオシマ1/350(多摩・球磨・長良・鬼怒)の5500トン軽巡で曖昧になっている表現の一つに、船体後部の方位測定室から6番砲塔の間にある通風口が挙げられます。

 上図で示したように、阿武隈の公式図上では(A)~(C)の3種類の通風口が描かれています。いずれも後部機械室通風口で、鬼怒の公式図でも形状が若干異なるものもありますがこの3種類に相当する通風口が描かれています。また防空巡洋艦改装後の五十鈴の公式図では(B)のタイプのみ甲板上にありませんが、これにつながっていたと考えられる通風路は阿武隈や鬼怒と同じ位置に存在するため、後述する多摩のように船室側面に吸気口を付けていたと考えます。他の長良型に関しても機関の構造や配置が同じである事から、これら3種類に相当する通風口があったのではないかと考えます。

 多摩の公式図では阿武隈の(A)~(C)に相当する通風口が描かれていません。しかしながら艦尾上甲板の通風路はほぼ同じ位置に存在し、船室側面に開口部記号「(×)」が描かれています。また側面図の該当部にもハッチ状のものが描かれていることから、給排気の出入口は甲板上に設けられた通風口ではなく船室側面に開けられた蓋付きの通風口だったものと考えられます。つまり、球磨型も長良型も後部機械室の給排気システムそのものに違いはなく、出入口の形だけが違っていることになります。

 また、多摩の公式図には(D)の位置に通風口らしきものが描かれています。これには明確な説明がなく、また直下には船室も通風筒もありません。大戦中の多摩の写真でこの部分が明確にわかるものが手元にないため真偽はわかりませんが、公式図の艦尾上甲板平面図にはこの付近に「噴気装置塞止弁」と説明のある装備品が書かれています。これは阿武隈や鬼怒の公式図には無いもので、何に使われる装備かはわかりませんが、あるいはこれに関係したものかもしれません。

 補足は以上です。

雑感:ハセガワ1/350日本海軍航空母艦「赤城」(延長戦-6)

2012–02–22 (Wed)
 前回までの事柄をまとめると以下の通りになります。

・左舷後部機銃座の空間は少なくとも大改装直後はキットが示す通りと考えられる。
 ただし昭和16年の時点ではフジミ1/700のようにクローズドされた可能性もある。
・左舷前部機銃座の通路の部品(K5)は艦首側から約9.5mmをカットする。
 甲板の取り付け部の凸モールドは該当部を削って面一とする。
・公式図上では左舷前部機銃座の支柱内側に補強桁が存在する。
・各機銃甲板上の作業員控所と着艦指所が表現されていない。
 少なくとも左舷側には存在したものと考えられる。
・右舷前部機銃座の艦首側の段差の再現、及び予備艦橋部分のかさ上げ。
・機銃座の高さはキットの位置より0.5~1mm程度低いと思われるが、
 作業量が多い割に効果が見込めないため手をつけない方が無難。

 この他にも最上甲板の主砲射撃指揮所の構造や左舷高角砲甲板と格納庫の仕切の横幕(帆布)の存在など、公式図から気になる部分はありますが、それらはまたの機会に書くことにします。



 赤城の話はとりあえずこれで終わりにします。長々と書いた割に大した内容もなくすみませんでした。次は以前保留にした軽巡阿武隈の後部甲板上の吸気口に関する事柄と、空母千代田に関して引っ掛かっている事を書いて、1/100海王丸に戻るつもりです。

雑感:ハセガワ1/350日本海軍航空母艦「赤城」(延長戦-5)

2012–02–16 (Thu)
 前回まで赤城の左舷側機銃座の高さに関して述べました。しかしながら、その後再度仮組して全体のバランスを見てみたところ、機銃甲板を1mm下げてもキットのままでも全体の印象はさほど変わらないように見えます。機銃甲板を下げると下部サポートの調整など作業量が格段に多くなる割にそれに見合った効果は見込めないと判断したため、公式図からの推測はそれとして、位置云々の事柄に関しては取り下げることにします(延長戦3と4の該当部は打ち消し線で消してあります)。



 4つの機銃座の部品の甲板上には、滑り止めとは別に幾つか長方形のモールドが成されています。これは公式図上では作業員控所または着艦指所と描かれている部分ですが、キットでは何の表現も成されていません。
各部品の赤及び白矢印が作業員控所、青矢印が後部着艦指所です。
(この画像はクリックすると拡大表示します)

 これは機銃甲板平面図上に実線で描かれているので、ポケットのように飛行甲板にぶら下がっているものではない事は推察できます。しかしながら、手持ちの赤城の写真を並べてみても、写真日本の軍艦別巻2「海軍艦艇図面集Ⅱ」に収録されている赤城の舷外側面図にもそれらしい構造物は見当たりません。


丸スペシャルNo.56 日本の空母Ⅲ p14より

 この真珠湾攻撃当時とされる写真を見ると、左舷後部機銃座付近から飛行甲板に向かって身を乗り出している兵員が多数確認できます。しかしながら、図面上ではここにはポケットがなく、また[延長戦3]で述べたように後部機銃座から飛行甲板までの高さは約1.6~2mほどあるため、機銃座から直接飛行甲板に身を乗り出すことはできないはずです。とすれば、ここには飛行甲板から約40~70cmほどの位置に足を置ける場所-すなわちポケットと似たような作業員控所があったのではないかと考えます。

 他艦で機銃甲板上に作業員控所がある例を探してみたところ、解体中の隼鷹の写真に写っているものがありました。


丸スペシャルNo.56 日本の空母Ⅲ p63より

 これは同艦の公式図にも描かれているもので、上が作業員控所、下の扉らしきものが開いている部分が銃側弾薬格納所です。それで、赤城の機銃甲板の少なくとも左舷側にもこのような形状または下側がオープンの控所があったのではないかと推測します。最初の画像の右舷前部機銃座(K6)の白矢印で示した位置の控所は飛行甲板の下に位置しますが、兵員数人が立ってしか入れないという疑問は残るものの、もし存在したとすればセミクローズかクローズ状の構造物があったのかもしれません。

 右舷側機銃座(K6, K18)の部品には一部へこんでいる部分があります。

(この画像はクリックすると拡大表示します)

 黄矢印で示した部分は、機銃座が船内の甲板よりも高い位置にあるために設けられている段差で、公式図上ではここに数段程度の階段が設けられています。キットは機銃甲板の厚みが1mm程度あるためにそれほど深い段としては表現されていません。前部機銃座(K6)の水色で示した部分は長方形の凸モールドになっていますが、ここは図面上では後方と同じ段差なので凸部を削って凹に直す必要があります。その際に画像左側の段差共々機銃座の底から0.5mm程度まで下げ、機銃座が接する壁面にある開口部モールドの下側を掘るか貫通させて広げると、位置関係がより自然になります。

 また前部機銃座のピンクの矢印で示した部分は公式図上では予備艦橋となっていて、上述の海軍艦艇図面集の側面図でもこの部分が一段高く描かれています。そのため、円形の部分を1.5mm程度かさ上げする必要があります。

 あと1回ほど続きます。

雑感:ハセガワ1/350日本海軍航空母艦「赤城」(延長戦-4)

2012–02–08 (Wed)
 3回目の続き。
 ハセガワ1/350赤城の左舷前部機銃座の部品(K2+K5)は、下の画像が示す形状になっています。

(本日の画像はクリックすると拡大表示します)

 船体側に付くK5は長細い箱状の形状ですが、高さが機銃座の厚み込みで3.5mm=実寸で1m25cm程しかなく、人が入り込むには高さが低すぎます。これも最初の雑感を書いた時に引っ掛かった事の一つですが、モールドの根拠を示す資料が手元になく良くわからないままになっていました。

 大和ミュージアムの公開資料の中に昭和16年9月現在の機銃甲板平面図と昭和13年8月製図の前部横断という公式図が存在することは前に述べました。これらの図面では該当部分はこのように示されています。

軍艦赤城 機銃甲板平面図 昭和16年9月末現在
横須賀海軍工廠造船部[製図・出図日未記入]より

航空母艦赤城 前部横断
佐世保海軍工廠造船部 昭和13年8月製図[出図日未記入]より

 平面図と前部横断図を並べてみると、キットのK5の部分は通路と部署から成り立っていることがわかります。平面図の青線は元の図面では点線で示されている部分で、用途は書かれていませんが、位置的に見て手すりを示しているものではないかと考えます。(a)の2ヶ所で切れている部分がありますが、これは機銃座の実線と重複して判読できなかったためで、外周に沿って続いていた可能性はあります(この手すり自体はエッチングベーシックA・MA54で用意されていますが、平面図とは設置形状が若干異なっています)。

 キットの部品K5は機銃座の艦首側の端までクローズドとなっていますが、平面図の(b)で示した部分に手すりと思われる線が回り込んで、その先にA.O.=アーチ型開口部が描かれています。そのため、下からのラッタルから開口部までの通路はオープンだったのではないかと考えます。これに関しては実艦写真にもそのように見えるものがあります。

日本海軍艦艇写真集航空母艦・水上機母艦p22
昭和13年秋の写真より引用

 この写真を見る限りでは、機銃座の背面の壁は(c)の位置で切れているように見えます。また機銃座のブルワークは(d)の位置で一部切れているようにも見えます。

 次に機銃台の高さですが、図面には木甲板下から機銃座までの高さが記載されており、その数値は1m90cm=1/350で約5.5mmとなります。しかしながら、公式図上でのこの部分の飛行甲板の厚みが約25cm=1/350で0.7mmなのに対して、このキットの飛行甲板の厚みは1.5mmもあるため、それを差し引いた4mm強をキット上の高さと考えれば、機銃台の底までの位置3.5mmは0.5~0.7mm程度高い事になります。ただし、この106番フレーム付近での上甲板から飛行甲板までの高さが公式図と比較してどうも1mm程度低いようなので、誤りと言い切れるかどうかは微妙な所です。


 それらを踏まえて、機銃座と飛行甲板の間隔のバランスを考えた場合、左舷前部機銃座はキットより1mm程度下げた方がバランスが良くなるのではないかと個人的には考えます。その場合、最上部の補用機格納庫の「床」が上の画像の鉛筆で引いた位置付近になるため、キットにモールドされているハッチや窓とのバランスも良くなるようです。

 前部横断の図面からは、他に機銃座のサポートと船体の間に更に補強材があるように描かれています。これに関しては形状が明白に判る写真がなく真偽は不明です。ちなみに、機銃座の裏側の補強材を穴空きの金属帯板などで全て作り替えている作例を目にしますが、公式図の記載が正しければ、穴空き板で作り替えるのは支柱から先の斜めのサポート部だけのようです。

 以下次回。

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MOMOKO.120%

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