雑感:ハセガワ1/350戦艦「長門」(その5)

2007–10–30 (Tue)
 このキットの本質的な問題は些細な外板モールドの有無などではなく、販売対象がいったい誰なのかという点に集約されます。

 1. 知識も技量もあり欲しいものがあれば金銭的な負担もいとわない重度の艦船愛好者
 2. 技量はあるが、知識と時間はない一般の模型愛好者
 3. 知識も技量もないが、生活と時間には余裕がある一般の方

 もし対象が1.か2.であるならば、部品数の多さも価格も納得できます。しかしながら、いくら艦船模型の需要が底上げされているからといって、定価2万/公称部品数900近い組立キットが並べたそばから飛ぶように売れるというのは、とても現実的な観測ではありません。感想1回目の冒頭に「店の顔となるようなキット」と書きましたが、私がこの概要を聞いた時には、極く少数の超マニア向けに、艦船の新規開発を犠牲にしても何十年単位で償却してゆく覚悟で開発したものだろうと捉えていました。その意味での「最終章」であると。

 ところが、その後メーカーの宣伝やインタビューを見聞きすると、どうも超マニアよりも3.の広い一般向けが主なターゲットで、また1/350艦船の新規開発を打ち止めにするつもりも無いように聞こえます。

 もしそうであるならば、彼らは知識も技量もないのですから、知識は説明書や資料などである程度カバーできるとしても、技量はキットの内容で対応するしかありません。それを考えた場合、他の1/350キットでは一体化されたり省略されている甲板上のモールドや艦橋上の各種計器類を別部品にした事は、部品点数を増やして製作の負担と開発費をいたずらに増しただけと言えます(明細は省略しますが、アオシマの重巡高雄を基準に考えた場合、部品数は現行から25%程度削減できます)。また、次の企画を前提にした発売ならば、営業のリサーチに基づき販売対象と設定価格をどこに置くかという点から妥協できる線を探ってゆかないと、いくら内容が凝っていても部品数の多さと高価な設定価格が需要の足を引っ張って、結果開発が止まってしまっては元も子もありません。覚悟の打ち止めと見込みの甘さによる断念では社内的なダメージははるかに異なるはずです。

 もちろん、退職後の団塊世代の方々が引退後の長い自由時間を過ごす手段として、私が思う以上に飛ぶように売れる可能性もありますし、次の企画はこのキットの売れ行きに関係なく出てくるかもしれません。しかし、過去に於いて大型艦船キットの戦略ミスが模型メーカーにも、また艦船模型全体の方向にも少なからず影響を与えてきたという歴史を思うとき、もし仮にこの長門が目標をクリアできたとしても、このままではいずれ致命的な事態に陥るのではないかという強い危惧がぬぐえません。

 これは内容をダウンさせて一般層に迎合するべきと書いている訳ではなく、艦船に限らず他の水準を大きく超える徹底的にこだわったキットというものは、時代流行に関係なく一定数は売れ続けるものです。ただ、それに伴う内容の高度化と価格の高額化で、開発費が早期に回収できる程の売上が期待できないのも、過去の幾つかのキットが実証していることです。ですから、徹底的にこだわるなら極く少数のマニア向けに数十年単位での償却を目指す、もし早期回収で次の企画につなげるつもりだったのなら価格と組み立て易さ(=部品数)を優先して内容面では妥協する、その最も基本的な方針が企画段階で定まっていなかったのではないかと思うのです。


 長々と書きましたが、これは模型全体の話であって、ハセガワの戦艦長門に関しては定価分の価値は充分にありますし、ある程度の組立模型の経験と時間がある方でしたら実艦の偉容を再現できると思います。キットの出来は非常に優れているので不可能という訳ではありませんが、パーツの数が多い事から全く組立模型の経験のない方はもちろん、艦船のキットを作り慣れていない方にもいきなりは辛いのではないかと個人的には考えます。最低でも同社から出ている1/350駆逐艦雪風を塗装(と必要に応じてエッチング)も含めて一通り作ってみて、組立模型と軍艦のコツ、ハセガワの艦船キットのクセなどを飲み込んでから取り掛かった方が良いと思います。

 あと1回続きます。

雑感:ハセガワ1/350戦艦「長門」(その4)

2007–10–28 (Sun)
 まだざっと見た限りですが、前回触れた船体の外板モールド以外には考証やモールドに大きな問題は無いように見えます。組立説明書の過程12で下部艦橋甲板(J12)の木甲板部分の塗装指示が抜けています。ここは高角砲ブルワークから後部の木目モールドに沿ってタンを塗ります。また、羅針艦橋(J12)及び戦闘艦橋(J18)の前のすのこ状のモールドはグレーチングを意味しているので同じくタンを塗ります。また艦橋の各甲板部分の多くはリノリウム貼りではなかったかとも思うのですが、この点に関しては確証がありません。

 煙突回りの探照灯台(S3+S28,S2+S27)は全面軍艦色の指示が成されています。実艦は吹き抜けではなく内部一杯に兵員待避所が設けられていたため、これはキットの指示が正解で凹みをくり抜いたり黒で塗る必要はありません(あえて変化を持たせるために凹みをやや暗いグレーで塗っても良いかもしれません)。また説明書のp14、過程13後半で付ける探照灯は左舷側(分図A、AF30+33+34+T1)と右舷側(分図B、AF30+35+36+T1)でモールドがわずかに異なるため、混ぜて付けないよう注意が必要です。

 他にもブルワークの処理や甲板の端の木甲板パターンなど気になる部分はありますが、総じて実艦の印象を大きく左右するものではないと思います。部品数はメーカー公表値では847ですが、実際には不要部品を除いても1,100個以上用意されています。恐らく吸気口など紛失しやすい部品を多少多めにセットしているものと思われますが、それでもかなりの数の部品と格闘することになります。組立説明書は段階を追ったわかりやすいもので、組立順にも特に不合理な点はないように見えますが、よく読んで塗装も含めた手順を考える事と、部品の付け忘れや組み忘れがないように組んだ部品を説明書にマーキングしながら作っていった方が良いかもしれません。また、比較的大きなキットなので、仮の工作台を用意してそこに船体を据え付けて組んでゆけば、工作中に船底部分の破損を防ぐことができます。

 エッチングはハセガワ純正のものが3種類用意されています。内容的にはほぼ妥当なものと思いますが、それほど安い買い物ではないため、もし今すぐ作りたいという事でなければ、ライオンロア他からエッチングセットが出るのを待ってその内容を比較した上で選んだ方が良いと考えます。

 総じて非常に優れたといいますか、凄いという表現が当てはまるキットではあります。ただ、先に述べた外板モールドは決して軽視できないことがらですが、このキットの「本質的な問題」はもっと別のところにあると感じます。

 以下続きます。

雑感:ハセガワ1/350戦艦「長門」(その3)

2007–10–26 (Fri)
(注:この記事には大幅に修正が加えられています。修正前原文は下に記載しています)

 まずキットを開いた方がみな疑問に思われる事だろうと思うのですが、船体には全面に外板モールドがあり、特にバルジ部分を中心に航空機のパネルラインのような長方形状の凹モールドの表現が目を引きます。少なくとも私の記憶では艦船モデルにこのような表現を施したものはありません。

 長門型戦艦に関しては、桜と錨の海軍砲術学校というサイトの戦艦「陸奥」引揚解体写真集のページに於いて、大戦中に爆沈し戦後引き揚げられた船体の詳細な写真が公表されています。これと比較しながらキットのモールドを見てゆくと、艦首と艦尾の水線上の水平面にある凸モールドは段付け継手による外板の重ね合わせを意味している事がわかります。下側の外板の接合部が段になって上と接合する方法で、段状に加工された部分が離れると線のように見えるものです。これは海王丸/日本丸や氷川丸等には見られない接合方法です。また、水線下の凹モールドは板を突き合わせて裏側に当て板を付けて留める単板当金継手を表現しているようですが、上記の陸奥の写真ではバルジの艦底部は船体中心側の板が上に重なる重ね合わせ継手を用いているようです。

 原書房刊「日本海軍艦艇図面集」に掲載されている、長門型戦艦の改装後の中央部構造切断図を見ると、バルジの内外に溶接記号が描かれています。下図赤矢印で示した外板の突き合わせ溶接記号は現在のものとは記述法が異なるのですが、内部のフレームとの接合が熔接である事から、バルジ外板も少なくとも中央部は熔接ではないかと考えます。

これらのことから、長門型戦艦の船体外板の構成は以下の通りと推察されます。
艦首と艦尾の水線上…段付け継手
同水線下…単板当金継手
バルジ中央部…上部=突合熔接、底部=重ね合わせ熔接

(本日分の画像は全てクリックで拡大表示します)

外板の接合方法、段付け継手と単板当金継手の違い


原書房刊「日本海軍艦艇図面集」
戦艦長門型(改装)中央部構造切断図より

20071024_1
艦首側の外板表現
水線上の水平面が凸モールドで段付け継手、
水線下とバルジが凹モールドで単板当金継手と熔接継手を表しているようです。
また、バルジと船体で水平モールドの位置は一致していません。

20071024_2
艦首・艦尾側の船底はそれぞれ一ヶ所
わずかにラインがズレている部分があります。


 今までの艦船キットで私が知る限りここまで外板表現にこだわったものはありません。根拠の有無は別としてもメーカーの努力は充分に感じられます。しかしながら、模型上の効果はまた別の問題で、個人的にはオーバーモールドだと感じます。

 実際のところ、全景写真では外板継目はほとんど見えませんし、接近して撮影した写真に段付け継手や重ね合わせ継手が見える写真はあっても、単板当金継手の外板接合部や熔接突合が見える写真などはほとんどありません。以前の説明で書いたように外板を突き合わせて裏から板を当てて留めるこの継手は、塗装がきちんと成されているならば構造上継ぎ目は直前まで接近しても見えないものです。何より船の模型は船体のラインの美しさや力強さが全体の印象に直結する最も重要な要素なのに、過剰なモールドがそれを損ねているように思えて仕方なく、せっかくの凝ったモールドも船体型の印象を変えるほど目立ってしまっては逆効果でしかありません。

 ただ、この修正はかなり厄介です。全ての外板モールドを埋めるのは舷窓や副砲付近の複雑な構造との兼ね合いで難しいため、バルジは舷外電路の上、また前後の船体は喫水線より上の外板モールドを残し、それ以外を全てを埋めるともう少しすっきりした印象になるのではないかと思います。具体的には、船体の凹モールドに沿ってPlastructなどの0.3mm丸プラ棒を貼った上で船体のラインを損ねないよう慎重に削り、全体にサフを吹けば比較的楽に整形できます(伸ばしランナーでも可能ですが、均一的に埋められるプラ棒の方が後の整形が楽で船体の削れも最小限で抑えられます。また、パテは細いモールドに沿ってひび割れや欠けたり肉やせする可能性があるためこの種の作業には向きません)。その際に複板当金継手の凸モールドも気持ち削った方が全体的に落ち着くかもしれません。

20071024_3
Plastructの0.3mm丸プラ棒を流し込み接着剤で接着し整形した状態
なお、プラ棒の接着に当たっては以前に触れた塗装マスクの着用が必須です。

20071024_4
素材の手持ちの関係で艦首より1/4までの処理で仕上げも不十分ですが
埋めることによる効果は大体わかると思います。
船体の力強さ、特にバルジの形状と巨大感が強調されてきます。

 以下続きます。



(訂正前原文)

 まずキットを開いた方がみな疑問に思われる事だろうと思うのですが、船体には全面に外板モールドがあり、特にバルジ部分を中心に航空機のパネルラインのような長方形状の凹モールドの表現が目を引きます。少なくとも私の記憶では艦船モデルにこのような表現を施したものはありません。

 モールドを良く見てゆくと、艦首部の水線下と艦底は先に書いた重ね合わせ継手を表現していることがわかります。艦首部の水平面が凸モールドになっていますが、これは恐らく複板当金継手の表側の当て板を、またバルジの長方形状の凹モールドは単板当金継手を表現したものと思われます。これらは陸奥の入渠作業中の写真から確認することができます。

 それで、このモールドの根拠についてはわかりませんが、私自身は全くの空想ではなく、何らかの根拠があってこのパターンにしたのではないかと推察します。艦首の外板の縦の幅が一様ではなく微妙にサイズが異なっている点が興味深く、いくつかリベット打ちの船を見た経験でも曲面を板で包む関係で外板の幅は一様には見えないのですが、これを空想でまとめると外舷の上部から艦底まで全て均一に揃えてしまうのではないかと思うのです。重ね合わせ・複板当金継手で構成された元々の船体に単板当金継手で作られたバルジを増設したと見れば、艦尾側の切り替えには疑問が残りますが、全く荒唐無稽な表現という訳でもないと考えます。

(本日分の画像は全てクリックで拡大表示します)
20071024_1
艦首側の外板表現
水線上の水平面が凸モールド(複板当金継手)、
水線下と垂直面が凹モールド(重ね合わせ継手)と違いがあるほか、
外板の水平面は喫水線のラインではなく最上甲板のラインから下に降りています。
また、バルジと船体で水平モールドの位置は一致していません。

20071024_2
艦首・艦尾側の船底はそれぞれ一ヶ所
わずかにラインがズレている部分があります。

 今までの艦船キットで私が知る限りここまで外板表現にこだわったものはありません。根拠の有無は別としてもメーカーの努力は充分に感じられます。しかしながら、模型上の効果はまた別の問題で、個人的にはオーバーモールドだと感じます。

 実際のところ、全景写真では外板継目はほとんど見えませんし、接近して撮影した写真に複板当金継手や重ね合わせ継手が見える写真はあっても、単板当金継手の外板接合部が見える写真などはほとんどありません。以前の説明で書いたように、外板を突き合わせて裏から板を当てて留める単板当金継手の場合、塗装がきちんと成されているならば、構造上継ぎ目は直前まで接近しても見えないものです。何より船の模型は船体のラインの美しさや力強さが全体の印象に直結する最も重要な要素なのに、過剰なモールドがそれを損ねているように思えて仕方なく、せっかくの凝ったモールドも船体型の印象を変えるほど目立ってしまっては逆効果でしかありません。

 ただ、この修正はかなり厄介です。全ての外板モールドを埋めるのは舷窓や副砲付近の複雑な構造との兼ね合いで難しいため、バルジは舷外電路の上、また前後の船体は喫水線より上の外板モールドを残し、それ以外を全てを埋めるともう少しすっきりした印象になるのではないかと思います。具体的には、船体の凹モールドに沿ってPlastructなどの0.3mm丸プラ棒を貼った上で船体のラインを損ねないよう慎重に削り、全体にサフを吹けば比較的楽に整形できます(伸ばしランナーでも可能ですが、均一的に埋められるプラ棒の方が後の整形が楽で船体の削れも最小限で抑えられます。また、パテは細いモールドに沿ってひび割れや欠けたり肉やせする可能性があるためこの種の作業には向きません)。その際に複板当金継手の凸モールドも気持ち削った方が全体的に落ち着くかもしれません。

20071024_3
Plastructの0.3mm丸プラ棒を流し込み接着剤で接着し整形した状態
なお、プラ棒の接着に当たっては以前に触れた塗装マスクの着用が必須です。

20071024_4
素材の手持ちの関係で艦首より1/4までの処理で仕上げも不十分ですが
埋めることによる効果は大体わかると思います。
船体の力強さ、特にバルジの形状と巨大感が強調されてきます。

 以下続きます。

雑感:ハセガワ1/350戦艦「長門」(その2)

2007–10–24 (Wed)
キットの部品割は以下の通り。
・A部品
船体(右舷、左舷)
・B部品
艦首先端部、艦首甲板
・C部品
クレーン動力室上部、シャフトブラケット、舵固定用部品、ほか
・D部品
艦尾側スタンド
・E部品
艦首側スタンド
・F部品
艦尾甲板、中央部甲板、エディプレート+スクリューシャフト
・G部品
船体内部補強用隔壁
・J部品
航空機作業甲板、下部艦橋甲板、司令塔甲板、副砲予備指揮所、羅針艦橋、
副砲指揮所・主測的所・上部見張所及び照射指揮所、測距所、
戦闘艦橋・主砲射撃所、ほか
・K部品
艦橋甲板、同側壁、下部艦橋側壁、司令塔、見張指揮所兼下部見張所、
檣楼配線室兼光学兵器庫、10m測距儀一式、ほか
・L部品
航空機作業甲板側壁、艦橋前檣、司令部艦橋側壁、羅針艦橋前面ブルワーク、
見張指揮所兼下部見張所、艦首・艦尾フェアリーダー、旗竿、
航空機作業用クレーン一式、菊花紋章、ほか
・M部品
後部マスト上部、同下部支柱、デリックブーム、係船桁、舷灯、ほか
・N部品(4個)
主砲・副砲関係部品一式、スクリュー先端
・Q部品(2個)
船体内部補強用隔壁、スクリュープロペラ、缶室通風路、艦橋支檣、ラッタル、
後部艦橋支柱、空中線展開用張出桁支柱、ほか
・R部品
後部艦橋関係部品、空中線展開用張出桁
・S部品
煙突・探照灯台関連部品、高角砲指揮所、ほか
・T部品(透明部品)
艦橋窓、主砲測距儀ファインダー窓、17m水雷艇風防、110cm探照灯ガラス、
後部見張所窓、甲板天窓
・AA部品(3個)
95式水偵一式
・AC部品
カタパルト関係部品一式
・AD部品(3個)
航空機運搬台車、同滑走車
・AE部品(2個)
艦載艇関連部品一式、94式方位盤、キャプスタン、ケーブルホルダー、
ボートダビッド、舷梯吊揚ダビッド、主・副錨、高角砲装填演習砲、ほか
・AF部品(4個)
各種キノコ型通風筒・排気筒、大型リール、中型リール、12.7cm高角砲、
25mm単装・連装・三連装機銃、110cm探照灯、60cm信号灯、双眼望遠鏡、
磁気羅針儀、見張方向盤、測的盤、各種方位盤・測距儀、機銃射撃指揮装置、
パラベーン、ウインチ、ほか
・その他
デカール、旗ステッカー、チェーン、ポリキャップ(2種)、実艦解説書、
塗装指示書兼張り線指示書、アンケート葉書
・初回生産限定特典
1/32ホワイトメタル製山本五十六大将フィギュア(説明書同梱)

 陸奥との大きな相違点である艦橋と航空機作業甲板、及び後部艦橋や艦載機がそれぞれひとまとめのグループになっている事から、恐らく同型艦の陸奥の発売も前提にした部品割ではないかと考えます。また、これも特徴的な相違である艦首先端は舷側や艦首甲板ごとB部品としてまとめられていますが、もしこれをそっくり差し替えるとすれば、ちょっと合理的なやり方ではないような気もします。

 装備品パーツであるAF部品の中に25mm単装や三連装機銃がある事から、他の時代への展開も考慮に入れられているものと思われます。機銃や高角砲の数は1944年秋の比島沖海戦の状態まで足りますが、増設機銃座や電探などの部品はありません。機銃先端の閃光覆いがそれなりに表現されているなど細部には凝った部分もありますが、装備品パーツのモールドの「キレ」は1/350雪風にほぼ準じたものです。また、各部のラッタルは、恐らくエッチングへの置き換えを考慮したものと思われますが、階段状のモールドではなく板の部品になっています。これは有り難い配慮です。

 全体的には、モールドの再現性を上げるために、同スケールの他社製品と比較して必要以上に部品の分割が増えているという印象を受けます。その事の是非に関してはまた後述します。

 以下続きます。

雑感:ハセガワ1/350戦艦「長門」(その1)

2007–10–22 (Mon)
 私が子供の頃、小遣いで買える組み立てキットといえば自分の目線より下の棚にあるものばかりでした。模型店でいつも下ばかり向いていた訳ですが、その頃に店の天井近くに置かれていたキットといえば、日模の1/200戦艦大和であったり、レベルの1/96コンスティチューションやエレールのソレイユ・ロワイヤルといった超大型の帆船の箱だった記憶があります。これらのキットはどちらかといえば商売よりも店の「顔」として飾られていた意味合いが強く、この世の全てを見下ろすように鎮座したまま朽ちていったものもありました。

 あれから長い長い歳月が流れ、大型の艦船キットの箱を顔として鎮座させる店も少なくなりました。そして、もし記憶の中の模型店がそのままならば、新しく店の顔として飾られるような艦船の大作キットが久しぶりに出てきました。

 今回ハセガワが発売した戦艦長門は、後述する船体外板のモールドを除けば実艦の勇壮な姿を再現した堂々たるキットではあります。部品数は帆船並みにありますが根気よく組んでゆけば恐らく完成に至るのではないかと思います。しかしながら、市場の現状に照らしてメーカーが誰に向けて何を売るのかといった基本的な販売戦略がどの程度考慮されたのかは、この記事を書いている時点では今一つ明確ではなく、その点に関して危惧の念があります。
 まずは例によって評価表から。
ジャンル:近代艦船・旧日本海軍戦艦
名  称:長門
メーカー:ハセガワ
スケール:1/350
マーキング:艦名、軍艦旗、大将旗、救命浮輪、艦載機マーキング一式、ほか(各種信号旗と将官旗はステッカー)
モールド:★★★★☆
船体の外板表現は意欲的ですが誇張が過ぎます。他は◎。
スタイル:★★★★☆
実艦の堂々たるスタイルを見事に再現しています。
難易度:★★★★☆
組むこと自体は困難ではなさそうですが、時間はかかります。
おすすめ度:★★★
内容は非常に濃いのですが、その分価格も高く、また組立模型の経験もある程
度は必要です。万人向けではないと思いますが、時間と経験があれば立派な作
品に仕上がる下地はあります。
コメント:
製作には充分な時間とある程度の技量が必要です。

20071022_1
タミヤのエンプラ程ではありませんが、かなり大きな箱です。

20071022_2
中はパーツの上からコの字型に折ったボール紙を中ふたとして
その上に左右分割の船体が乗せられています。
説明書などは底、また初回特典の山本五十六フィギュアも別包装で底に入っています。


 以下続きます。

初代海王丸のリベット打ち外板の話

2007–10–20 (Sat)
 ハセガワの1/350戦艦長門が発売になりました。その感想を書く前に、準備運動として船のリベット打ち外板の実例を一つ挙げる事にします。戦前、船の外板は板同士を重ねてリベットを打って留める工法が一般的でしたが、現在は板を突き合わせて溶接する工法に変わり、リベット打ちの船は保存船ぐらいしか見る機会がありません。

20071020_1
(2003年10月26日撮影)

 これは初代海王丸のジガーマスト(最も後方のマスト)付近の右舷側、13~19番フレーム付近の上部の外板を撮影したものです。海王丸の外板の接合部は、大部分は板同士を重ね合わせてリベットで留める、重ね合わせ継手と呼ばれる形状です。

 水平面の外板は横の列毎に上下互い違いに貼られた重ね合わせ継手で、板の端を重ねて2列のリベットで留められています。この写真では少しわかりにくいのですが、(A)の外板が上になり、黒のモールの直上に横1列とモール内に1列のリベットで下の(B)の板と結合しています。(C)の板は再び上になり、端を2列のリベットで結合しています。

 そして垂直面の継ぎ手の形状は、大部分が(1)のように船首側の板を上、船尾側が下にして重ねられています。ただし、長船尾楼甲板の最も上側の外板の垂直面だけは、(2)で示した外板同士を突き合わせて裏側に当て板を付けて留める、単板当金継手と呼ばれる形状になっています。この場合は表面からはリベットが縦6列並んで見えます(写真ではわかりませんが、実船では3列と3列の間に外板の突き合わせ面があります。しかしながら、これは直前まで近寄らないと見えません)。
 上の画像の(3)で長船尾楼甲板に沿ってリベットが打たれているのが見えます。そして甲板の上に2段分のリベットが出ています。

20071020_2
(2003年3月20日撮影)

 上の画像の(4)の部分を甲板上から見た写真です。外板の突き合わせ部分の裏側に当て板を付けて3列×2のリベットで留められているのがわかると思います。

20071020_3
(2003年10月26日撮影)

 これは右舷中央部の写真です。側面から見た場合は外板の横の接合面の方が縦の面よりもやや強く見えます。また、一番上の外板の縦の突き合わせ面はこの距離からは全くわかりません。

 また、海王丸にはありませんが、外板の突き合わせの接合部を裏表両側から当て板を当てて留める、複板当金継手と呼ばれる形状もあります。その場合は接合部の上に細い板が貼られたように見えます。これらリベット打ち外板の工法は、グランプリ出版刊「日本の戦艦」上巻p164-166に詳しい解説があります。

 それで、外板の接合部が重ね合わせになっている場合は厳密には段になります。また突き合わせの単板当金継手の場合は接合面の表現自体が不要です。これら外板接合の表現は舷窓と比較すれば1/700では完全なオーバーモールド、1/350でも極めて繊細な表現が求められることがわかると思います。リベット打ちの船が写真によって外板の接合部が見えたり見えなかったりするのは、光線の具合に加えてこの接合部の処理の違いに依るものではないかと考えます。

短信3

2007–10–18 (Thu)
 相変わらず多忙でどうにもなりません。今はハセガワの長門待ちというところです。

短信2

2007–10–16 (Tue)
 相変わらず多忙で製作は停滞したままです。

 空いた時間を見てはハセガワ1/350長門の感想を少しずつ書いています。「発売前に何が?」と思われるかもしれませんが、このキットに関しては些細なモールドの違いや考証の是非といった事とは別の部分で書きたいことがあります。予定通り発売されたら、来週はずっとその話になると思います。

短信

2007–10–14 (Sun)
 また少し多忙になって製作は止まったままです。
 今週で明けるため、来週からは少し進むかもしれません。

続スケールの話

2007–10–12 (Fri)
 前回の続き。

 現在私が製作しているのは1/100ですが、さすがにこのスケールになると「目に見えるものは全て作る」でないと大味感はぬぐえません。資料はあったらあったで大変なのですが、写真もなければ図面も資料もないないづくしの中から鑑賞に耐える大型模型を作り上げる方々の苦労には察するに余りあるものがあります。

 それで、個人的には縮尺が上がるにつれて、いわゆる「記号」の要素は少なくなってゆき、より実物に近い表現に組み替えてゆくのが、1/700とは違う1/350の製作上のポイントではないかなと考えています。例えば電気系統の装備品があればそれらの配線が必ずあるはずですし、各部のスポンソンには排水口と排水管がなければ海水や雨水が溜まって戦闘どころではありません。また終戦後の残存艦艇の写真を見ると、機銃座のブルワークに薬莢捨ての穴が開けられているものを多く目にします。この他にも考慮する事はいろいろあり、実艦の図面にそこまで描かれている事はまずありません。ですから、後は写真と、多くの事例から推察できる要素をどれだけ加えられるかが、1/700とは違う1/350のコツのような気がします。

 フッドを作っている時はそういう意識はありませんでした。この10年間での艦船模型の水準向上には目を見張るものがあります。特に、それ以前は必ずしも重要視されていなかった表面仕上げに対する細心の注意と、塗装面で他分野の手法を積極的に取り入れてゆこうとする作例が増えた事は非常に良い事だと思っています。塗装は前回現実的ではないと書きましたが、試行錯誤を重ねるうちに艦船独自の表現法が編み出されるかもしれません。私は塗装が苦手でとても編み出せそうにはないので、そういった面に期待しています。

※注
 帆船模型の世界では1/100は決して大スケールという訳ではなく、このクラスの現代帆船の作例の中には上部構造の細部表現をかなり省略したものがあります。これは決して手抜きという訳ではなく、スケールに対する表現の捉え方が軍艦と帆船では違う事に依るものです。

 全日本ホビーショーが開幕し、幾つか会場発表の新製品もあったようです。それについてはいずれまた。

スケールの話など

2007–10–10 (Wed)
 製作は相変わらず見せる程までは進んでいません。
 3回連続1行報告というのも何なので、最近思う事を少し。

 現在の艦船キットは、1/700に関しては各種のエッチングや兵装セットなどが出回り、表現方法もほぼ固まってきた感があります。私自身はあまり好きではないのですが、完全に記号と割り切り各部の表現を過剰に誇張し、また塗装もAFVや航空機などの汚し手法を取り入れたものが増えつつあり、オークションでもそのような完成品に人気があるようです。実際の艦船は作戦行動中以外は常にペンキを塗っておかないと船の傷みが早く進むため、戦艦や巡洋艦のような主力艦艇にAFVのような激しい汚しはあまり現実的ではなかったと思うのですが、それもまたモールドやエッチングと同じ「誇張」の一環として考慮されるものなのかもしれません。

 それに対して1/350はまだキットが揃い始めたばかりで、エッチングや周辺パーツも充分ではなく、表現方法もまだ固まっていないように見えます。以前にも書きましたが、1/350のモールドを詰めようとしても、現状ではエッチングや周辺パーツでゴテゴテに固めた1/700のゼロックス拡大コピー以上には見えないという難点があり、それらを見慣れた目には逆に物足りなさすら感じるように思います。極限まで作り込んだ1/700とは違う世界、1/350「にしか」できない表現を考えないと、このスケールは定着しない-物足りないのならば1/700を作り込んだ方が見映えが良い-という選択になってしまうような気がします。

 この項続きます。

短信2

2007–10–08 (Mon)
 相変わらず見た目変化なしです。次は少し進むかもしれません。

短信

2007–10–06 (Sat)
 いろいろやっていましたが、結論としては前回から見た目変わりはありません。ちょっと疲れ気味です。

ハセガワ1/350長門、船体金型一部修正

2007–10–04 (Thu)
 諸事多忙で製作は前回からほとんど進んでいません。

 今月発売予定のハセガワ戦艦長門の船体の金型がこれまで公表されていた試作品から一部修正になったと、公式サイトで発表がありました。今月の模型誌でも指摘されていたオーバー気味の船体外板モールドを控えめに抑えたということです。

 ハセガワの長門は発売され次第感想を書くつもりですが、写真を見る限りでは修正後とされる船体のモールドはまだオーバー気味な印象があり、個人的にはこれならばアオシマの高雄型のような極細の凸モールドか、むしろ何も無い方が良いような印象があります。これは実際にキットを見ればまた印象が変わるかもしれませんので、詳しくは発売後にまた。

船首楼の製作・後編(その6)

2007–10–02 (Tue)
 前回の続き。船首楼内部右舷側の用途不明の角管と甲板の排水管を付けた所まで。

200701002_1

 ここは左舷側と同じです。以降、右舷側の配管はかなり複雑になります。

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MOMOKO.120%

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現在は1/100初代海王丸の製作を一時休止して、ハセガワ1/350空母隼鷹を製作しています。

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