廃人への道 Part3

2006–06–29 (Thu)
 船のアンカーチェーンのリングの自作が難しいのなら、中にスタッドの入ったリングをエッチングで抜いてしまおう。具体的な手順は藤崎ヒロ氏のWebの解説に従い、ドロー系のソフトでパターンを作成し、レーザープリンタで印字した上質紙のトナーをアイロンで真鍮板に定着させ、あとはエッチング液の中にドボン。注意すべきことは多いものの、手順そのものは複雑ではなさそうです。

 問題はエッチングの工程です。藤崎氏と違い私の場合は0.3~0.5mm厚の真鍮板である程度の数を必要とし、他にもエッチングで作りたい部品もあるため、あまり簡単な道具ではいつまでたっても腐食が終わりません。だいたい30分も1時間もエッチング液を手でかき混ぜてはいられませんし、万一作業中にひっくり返そうものならもう二度と自宅で模型は作れません。そこで、かなり値が張りましたが、専門の道具を投入することにしました。
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 サンハヤトからは初心者用に一式揃ったセット商品も出していますが、藤崎氏の手法では原稿を印画板に焼き付ける過程がないため、エッチング槽と温度調節用の投げ込みヒーターとエッチング液があれば充分ということになります。

20060629_1

 これが組み立てた写真です。要するに熱帯魚用の水槽みたいなもので、写真には映っていませんが、別に置いた簡易ポンプで槽の底面からボコボコ空気を送り込んでエッチング液をかき混ぜる構造になっています。左側に突っ込んでいる黒い棒状のものが温度調節用のヒーター、あと気休めに温度計が1本付いています。エッチングに用いる真鍮板は2mmの穴を開けて腐食しないチタニューム線を引っ掛けて天板からぶら下げる形になります。パターンを転写した真鍮版を吊してヒーターとポンプに電源を入れれば、4~5分で40度近くに達します。天板に水に濡らしたペーパータオルをエッチング液の飛散防止のために掛け、あとはただ待つだけです(この写真は洗浄中のもので中には水が入っていますが、実際は濃い赤茶色のエッチング液が入ります)。

 早速テスト用に0.05mm厚の片面抜きからやってみました。一式セットして放置すること約20分。

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(画像をクリックすると拡大します)

 まずまずのようです。次に0.3mm厚で単滑車の部品を両面抜きで作ってみます。一式セットして放置すること約40分。
20060629_3

(画像をクリックすると拡大します)

 0.3では0.05ほどシャープには仕上がりませんが、とりあえず形にはなります。これでエッチングのチェーンリングもできるだろうと思ったのですが…。

モデルアート増刊「モデリングガイド大和」のことなど

2006–06–27 (Tue)
 役者が着替え中なので、廃人への道はお休みします。

 雪風の雑感の中で、キットを作るために必要なテクニックブックについては触れませんでしたが、プラの組立模型をきれいに作るためだけなら、注意すべきことはそれほど多くはありません。現在入手可能な本の中ではモデルアート別冊の艦船模型テクニックブックをよく読めばコツは全て書かれています。

 艦船模型が抱える問題の一つに、最も有名なアイテムの難易度が高い、ということがあります。つまり戦艦大和は日本最大の軍艦で装備品が非常に多く、どのスケールであっても製作の手数がかかるために初心者が気軽に作れるキットとは言い難いのですが、大和以外をメインに持ってきても一般に関心を引かないというジレンマがあります。そのため間口を広げるという名目のもと、ハードルの高いキット(=戦艦大和)をいかに簡単そうに見せるか、という矛盾した視点で編集せざるを得ないため、結果的に似たような主旨の本ばかりが繰り返し出てくる、ということになります。もちろん初心者は常に入れ替わりますから、それに対する本が常に出ている事は重要ですが、既に出版された本がまだ在庫がある時点で似たような内容のものを出しても、「その存在意義は何?」と見える訳で…。

 先日出版されたモデリングガイド戦艦大和の印象も同様で、身も蓋もない書き方をすれば、上で触れた別冊テクニックブック(特にその2巻目)や季刊の艦船模型スペシャルなどを既に持っている人にとっては、目新しいものはほとんどありません。書店でこれと、学研の歴史群像No.54戦艦大和武蔵が並んでいたら、多くの模型愛好者はあと300円足して後者を選ぶのではないかとさえ思えます。「食玩で興味を持った層を取り込もうとしていたではないか」という反論があるかもしれませんが、もしそれが主旨であれば食玩の楽しさと奥の深さを徹底的に掘り下げた上で最後に組立模型の作り方「も」示すべきで、構成が逆になるはずです。あくまでも組立模型の視点から見た食玩、という切り口でしかないため、食玩で興味を持った人がはたして1800円も出してこの本を買ってくれるかというと、個人的には疑問に感じます。

 昨年の映画公開以来、戦艦大和や旧日本海軍艦艇に関する本が多数出版されました。全てに目を通した訳ではありませんが、中には従来の二次資料の孫引きで埋めたようなものも少なくなかったように見えました。モデルアートが「立ち位置」的に一貫して初心者の窓口にいることは充分承知していますが、艦船模型テクニックブックがまだ購入できる現状を考えた場合、それとは違う切り口を見せないと、映画公開に関連して出版された他の多くの大和便乗本と何が違うのか?という印象しか与えられないように思うのです。それが商売だと言われればその通りなのですが、とても残念な気がしました。

廃人への道 Part2

2006–06–25 (Sun)
 模型用のチェーンが使えないとなれば、何かチェーンのリングの代わりになるものがないか探してみよう。模型店の棚を眺めているうちに見つけたのがスプリング。円形だがこれを切って柱を付けられないかやってみよう。焼きなましをすれば固い金属も柔らかくなって楕円状に整形できるはず。

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 …駄目でした。やはりこれもステンレス素材のようでハンダが付いてくれません。ならば、型を作ってそれに真鍮線を巻き付けてリングを作り、柱を付ければ出来るはずだ。

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 出来るには出来たのですが、どうしても形が均一になりません。それにこれではいつになったら20cm×2本のチェーンが出来るのか考えただけでも頭が痛くなります。もっと合理的に均一にリングを量産できる方法はないだろうか。そこで名案らしきものを思い付いたまでは良かったのですが…。

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次回以降登場予定

廃人への道 Part1

2006–06–23 (Fri)
 海王丸の製作は船首楼がかなり出来てきたので、アンカーチェーンを用意することにしました。ハセガワ雪風の雑感でも少し触れましたが、艦船の錨の上げ下げに用いられるアンカーチェーンは、リング同士が絡まらないようにその中心にスタッドと呼ばれる仕切柱が組み込まれた、特徴的な形をしています。

20060623_1
実船のアンカーチェーン

 キット付属の金属パーツや市販の模型用チェーンにはこの仕切柱がないため、1/100という縮尺ではそのまま使うことができません。製作中は船体塗装などの関係で何度か船内に引き込んだり出したりする事が想定されるため、仕切柱はチェーンをある程度手荒に扱っても取れない強度が必要になります。また、塗装に関しても、他の艦船のように甲板上に置かれるものであれば、接着固定してその上から塗料を吹けば済むことですが、この船に関しては一旦船外に引き出してから甲板上の錨につなぐため、塗料を吹いたらチェーンがそれで固まってしまいます。塗料以外の方法で黒くする事を考える必要があります。

 まず最初に、キット付属のチェーンに真鍮線をハンダ付けしてみました。

20060623_2

 …付きません。どうも素材がステンレスのようでハンダが全く付いてくれません。それにこのチェーンではリングが円に近いため、真鍮線を付けると実船のようなリング同士の間隔が全く無くなってしまいます。ストックにあった模型用のチェーンを片っ端から試してみましたが、ハンダが付かなかったり、リングが円だったりとどれも使い物になりません。

 困ってしまいました。何か方法を考えなければなりません。

雑感:ハセガワ1/350「雪風」(その6)

2006–06–21 (Wed)
 最後は資料の紹介を。

 旧日本海軍艦艇は公表されている原資料が限られているため、一見豊富に出回っているように見えても内容的に重複しているものも少なくありません。陽炎型駆逐艦は太平洋戦争の直前に建造配備されたため、国民の目に触れる機会が少なく、現在公表されている写真はそれほど多くはありません。そのため、資料も陽炎型限定ではなく他の形式の艦と合同で編集されているものがほとんどです。

 手元に資料が全く何もなく、キットの部品を見ても何が何かさっぱりわからない…という方は、とりあえずこの3冊を揃えて読めば一通りの知識は付きます。


 この3冊は「相互補完」の関係にあります。まず左の駆逐艦初春型~(以下、ハンディ版と表記)は実艦の計画建造から改装、戦時中の変遷を写真や記事・艦型図と各艦の行動記録で示した本で、つまり全般的な基礎知識がこれでわかります。ただ、21×15cmと小さい本なので、写真が少しわかりにくい難点があります。

 中の学研の一連のシリーズは、超精密模型の紹介が細部の表現を考える上で非常に参考になりますし、あまり公表されていない写真資料や艦船研究の最新の情報も多数掲載されています。この陽炎型駆逐艦では模型に加えて戦後の雪風やマニラ湾で大破着底した沖波の写真が非常に参考になります。ただし、基本的にハンディ版に書かれている基本データが頭の中に入っているという前提で編集されている本なので、模型の内容を検討したり別の時期や別の艦へ改造するために必要な、実艦の要目や歴史・変遷といった点で少しわかりにくい傾向があります。

 右の日本の駆逐艦は模型愛好者向けに実艦の構造から装備品に至るまで膨大な量のイラストで示した本で、これがあればキットの各装備品の形状や役割がよくわかります。ただし実艦の写真は1枚も載っていないので、ハンディ版などの写真集と照らし合わせながら読むのがベターではないかと考えます(学研の陽炎型駆逐艦はこの記事を投稿する時点では在庫なしですが、ハンディ版と日本の駆逐艦だけでもある程度のことはわかります)。


 もし日本の駆逐艦が入手できない場合は、右の本がある程度代わりにはなります。ただし構成的に若干とらえにくい所もあります(入手できれば無理してまで購入する必要はありません)


 ハンディ版の写真は小さくて見辛い、またはもっと大きな写真で「鑑賞」したいという方にはこれ。価格が高いのでハセガワの雪風だけのために買うのはお勧めし辛いのですが、1頁1隻収録の大判の写真集で鮮明なものが多く、細部のディテールや日本の駆逐艦の魅力が十分に感じ取れます。陽炎型駆逐艦の写真は12隻が18頁に渡って掲載されています。



最後にキット本体の情報も貼っておきます。キットが欲しくても周囲に模型店がない場合は通販に頼るしかないのですが、その場合キット本体の値引率に送料や各種手数料を含めた金額と納期を「はかり」にかけるのは本当につらい判断です。amazonは投稿時点では品切れですが、恐らく通常版が出た後は1~2割引+送料無料で扱ってくれるのではないかと思います。

雑感:ハセガワ1/350「雪風」(その5)

2006–06–19 (Mon)
 色々書きましたが、細かい部分では幾つか気になる所はありますし、縮尺の設定ミスは本当に残念ですが、素性は非常に良いキットなので、あとは必要に応じてモールドに手を入れていったりエッチングを使い分けてゆけば、素晴らしい雪風ができると思います。

 1/700での作り込みに限界を感じても、これまでその上を補えるキットといえばニチモの1/500・1/200か各社から発売されている戦艦大和しかありませんでした。、ニチモは1/500の初期開発分を除けば素性の良いキットばかりですが、総じて発売時期が古いために今の目ではモールドに見劣りする部分があり、それを補うディテールアップパーツが高価に付くという悩みがありました。また戦艦大和は日本最大の軍艦で製作工数が飛躍的に増えるため、手軽に作るにはつらいものがありました。

 今回のハセガワ雪風は大きさも価格的にも手頃で、モールドの問題も前に述べたように各社から専用エッチングパーツが出揃えば選択の幅が広がるはずです。1/700での表現に限界を感じた方が「その上」を目指すためのステップとしても最適で、工程的にも大和に比べればはるかに軽い手数で仕上げられると思います。


 ハセガワの1/350艦船シリーズは、昨年発売された戦艦三笠は世界的にも有名な鑑で、むしろそれまで鑑賞に耐えるまともな大型プラキットがない状況が不自然だったと言えます。今回の雪風に関しては事前のシークレット的な宣伝が大げさだっただけに、大艦を期待した愛好者からは失望の声もあったと聞きますが、上に書いたようにこれも重要な意味を持つキットであると考えます。ただ、5月の静岡見本市で南極観測船の宗谷を次の新製品として発表したことには少なからず懸念があります。

 これは個人的な考えになりますが、新しいスケールでシリーズを展開する場合、最初のうちは開発するキットにある程度の関連性がなければ、メーカーがどの方向を向いて走っているのかわからない不安感を愛好者に与えてしまうのではないかと考えるからです。私自身は宗谷は好きな船の一つですし、それはそれで重要なキットには違いないのですが、バリエーション展開も難しく需要が軍艦に比べてどの程度見込めるのかも疑問です。もし出すとすればキットの数がある程度増えてシリーズの方向性を固めてから番外として示すべきもので、ここは出すとすれば特型か秋月型の駆逐艦、または潜水艦の方が、愛好者にとってもシリーズの方向性が明確になって安心して買えたのではないかと考えます。とはいえ、2006年の現在、日本の艦船の大型スケールの組立キットを積極的に出しているメーカーは他にはありませんから、一つでも多くの展開を期待したいものです。

あと1回続きます

雑感:ハセガワ1/350「雪風」(その4)

2006–06–17 (Sat)
 キットの指示通り1940年竣工時として作るためには、船体にモールドされている舷外電路を削る必要があります。これは恐らく後で出てくるであろう大戦末期型と船体を共通させるためだと思うのですが、舷窓との絡みで削るのは容易ではありません。竣工時と1941年開戦時との外形上の大きな違いはこの電路しかないため、竣工時にこだわらなければ電路はそのまま残して1941年12月開戦時として仕上げる方が無難だと考えます。

 船体の外板表現はあっさりしたもので、凸モールドですがあるのかないのか判らないようなレベルです。ただ、これも個人的な主観になりますが、駆逐艦という軍艦は太平洋を35ノット以上の高速で突っ走る軽快性が特徴ですから、ここに戦艦や空母と同じような外板表現を強調してしまうと、全体的に重い感じになって駆逐艦らしさがかえって失われてしまうように感じます。モールドはあくまでも全体の印象を良く見せるための「飾り」であって、それを追求するあまり全体の印象まで変わってしまうようではかえって逆効果にしかなりません。前回述べた艦首の整形も実行すればモールドが消えてしまいますが、私自身は多少のモールドと全体型とどちらを取るかと言われれば、全体の印象をらしくする事を優先させる方が良いのではないかと考えています。

 その他のモールド表現も全体的にあっさり気味で、今の1/700よりもメリハリに欠ける印象があります。私自身は今の1/700の作り込みは行き過ぎた過剰表現とも思うのですが、それを差し引いても少し物足りなさが残ります。主砲塔や魚雷発射管、各部のジャッキステイや甲板の滑り止めなどはもう少しモールドを強調しても良かったのではないかと思います。なお、駆逐艦の魚雷運搬軌条はレール状のもので、航空機のそれと違って柵ではないため、キットのモールドを無理に作り替える必要はありません。また、アンカーチェーンには黒塗装された金属部品が入っています。実際のチェーンとは少し形状が違うのですが、これは船体に接着した後で船体色で吹いた方がしっくりすると思います。

 デカールは艦名や軍艦旗、二式大艇のマーキング等が入っていますが、艦首の駆逐隊番号は入っていません。これは戦前の日本駆逐艦の特徴だけに、雪風が所属した16の番号だけは入れて欲しかった所です。ちなみに現在公開されている竣工時とされる写真を見る限りではキットの塗装説明で間違いはないのですが、あれは終末公試の写真であるため、就役後は艦首に駆逐隊番号の16の文字と、第二煙突に駆逐隊内の序列を示す2本の白帯を引いていたようです(開戦時とする場合は艦名や識別記号は全て消されたため塗装する必要はありません)。

 別売のエッチングパーツは、キットのディテールアップというよりも、プラでは表現し切れない部分をエッチングに置き換えたという感じで、キットでモールドされていたり部品としてあるものは入っていません。これも個人的な主観になりますが、全体に薄味なモールドに手すりや梯子を付けてもかえってバランスが失われるだけで、もしエッチングを導入するのであれば、ホーサーリールやスキッドビーム、爆雷装填台やハッチといった1/700の駆逐艦用エッチングでは標準的に入っている部品も合わせて考慮する必要があるのではないかと考えます。ゴールドメダルやホワイトエンサインといったメーカーがそれらの部品を含めたエッチングセットを出してくるのは恐らく「時間の問題」でしょうし、ハセガワ自身もアドバンスバージョンで対抗するかもしれません。ですから、エッチングに関しては今すぐ作って飾りたいという人以外は、それらメーカーの製品が出揃ってから比較した上で選択するのが賢明ではないかと思います。


以下続きます

雑感:ハセガワ1/350「雪風」(その3)

2006–06–15 (Thu)
 その2までupした所で、肝心の縮尺のチェックを忘れていた事を思い出し、まあハセガワの最新作だからそんな基本的な部分でミスはないだろうと確認のつもりで船体を定規に乗せてみました。陽炎型の船体全長は118.5mですから、1/350では33.86cmになるはずですが、

20060615


 え゛?

 全長、水線長、共に約7mm長く、最大幅は約1mm長い。ハセガワさんやってくれました(泣)。これは私の推測になりますが、陽炎型の公試状態の水線長は116.2mで、全長118.5(m)÷水線長116.2(m)×33.86(cm)=34.53(cm)でキットの実寸とほぼ一致します。ひよっとしたら全長の数値を水線長として設計してしまったのかもしれません。誤差が約2%ということで、レジンキットの事を思えば許容範囲と言えなくもありませんし、過去においても縮尺が厳密に出ていなかった艦船キットは決して珍しくないのですが、ニチモの1/200陽炎型がほぼ縮尺通りだった事を思えば触れない訳にもゆきません。

 ただ手元にある同型艦の野分の公式図と比較する限り、主要構造物の位置関係は実寸から割り出した縮尺1/343でほぼ合っています。縮尺そのものの誤差は修正のしようがありませんし、誤差の数値は微妙なレベルですので、これだけは割り切って作るしかありません。よって、6月12日に書いた評価表は以下の通り書き直します。

スタイル:★★★★☆
このスケールでキャンバーの再現は出色だが一部修正要。船体形状も良好だが艦首の先端はややだるい。

スタイル:★★★☆
実寸約1/343。このスケールでキャンバーの再現は出色だが一部修正要。船体形状も良好だが艦首の先端はややだるい。


 このキットの特徴として、甲板のキャンバーがそれなりに再現されているという点が挙げられます。キャンバーとは水はけを良くするために甲板の断面が中心でわずかに高く、舷側方向に向かってゆるやかな弧を描く形のことで、この時代のほとんどの船の甲板はこのような形状になっていました。プラの組立模型では一部の大型キットを除いて省略される事が少なくないのですが、このキットの甲板はそれを再現しています(ですから、定規を当てて甲板が反っていると平に削ってはいけません)。

 「それなり」と書くのは、日本の駆逐艦の船体の最も大きな特徴の一つである、艦首甲板の主砲塔付近から艦橋付近までの両端のエッジの表現が不十分で、上手く言葉にはできないのですが、実艦写真と比較すると今一つ特徴が掴み切れていないように感じるからです。特に艦橋の両端付近はキットのようにかまぼこ状に船体にかぶさる形ではなく、角をナイフで削ぎ落としたような形状で、全体写真を比較するとこの部分に強い違和感があります。ただこの部分の修正は、やるとすれば甲板を船体に接着した上でプラ材などで一旦エッジを立ててから図面や写真を参考に両舷均等に削り直すしかなく、失敗したらキットそのものがパーになりかねません。ですから、それほど気にならないというのであれば、伸ばしランナーなどでリノリウムとエッジの境界のモールドを作った上で、エッジを軍艦色で塗れば、それほど目立たなくなるのではないかと思います。

 船体は上で述べた艦首甲板のエッジを除けば良好で、陽炎型駆逐艦の特徴を良く捉えています。船体内部には複数の補強材が付き、展示台への固定や変形の対策も考えられています(つまり、ウォーターラインモデルとするための配慮は一切ありません)。ただ、これは成形上やむを得なかったのかもしれませんが、実艦の艦首先端がナイフのように薄く鋭いものであるのに対して、キットはやや厚くだるい感じを受けます。ここは内側をポリパテで完全に埋めた上で写真を参考に薄く削れば、よりシャープな印象になると思います。また艦尾のナックル(底のエッジ)も気持ちだるいので、ペーパーできれいに角を出した方が良いかもしれません。

 モールドには幾つか気になる部分があります。まず艦橋正面の窓は数も大きさも異なりますし、リノリウムであるはずの旗甲板には鉄甲板の滑り止めが付いています。ここはかなり目立つ部分なので、埋めて開け直したりモールドを削る必要があります。また艦尾甲板の先端の両端にある3台×2の爆雷投下台は図面を読み違えたのかただの箱になっているので、ここもモールドを削ってそれらしく作り直す必要があります。


以下続きます

雑感:ハセガワ1/350「雪風」(その2)

2006–06–14 (Wed)
キットの部品割は以下の通り。

・A部品
 船体(左舷)、後部煙突+後部操舵所、煙突頂部、スキットビーム、ほか
・B部品
 船体(右舷)、ビルジキール、烹炊室煙突、スクリューシャフト、後部マスト、ほか
・C部品
 船首楼甲板、長船尾楼甲板中央部、前部煙突、予備魚雷格納所、舵、ほか
・D部品(2枚)
 9mカッター・内火艇、ボートダビッド、魚雷発射管、主砲塔台座及び砲身、ほか
・E部品(2個)
 魚雷発射管シールド
・F部品(3個)
 主砲塔
・J部品(透明部品)
 羅針艦橋窓、110cm探照灯レンズ
・K部品
 艦橋、長船尾楼甲板艦尾部、後部兵員室上面、前部マスト、機銃座、ほか
・L部品(透明部品、初回生産分のみ封入)
 二式大艇関連部品一式
・M部品(金メッキ部品)
 スクリュー、展示台支柱
・N部品(2個)
 パラベーン、25mm連装機銃
・S部品
 展示台
・その他
 ポリキャップ4個×2組(P部品)、アンカーチェーン(UB部品)、デカール

 このうち、二式大艇は初回生産分のみのボーナスセットになっています。ハセガワの艦船キットはパーツ割に今一つ合理性というか美的感覚がない印象がありますが、このキットも例外ではなく、相変わらずパーツグループが細かく、砲塔と魚雷発射管のシールドに至ってはD部品のグループから張り出した形で付いている上に、主砲塔の1個と艦橋はランナーを途中でもぎ取った形で入っています。これはいろいろ事情があるのかもしれませんが、ランナーグループから張り出したりもぎ取った部品は見栄え以前に脱落紛失の元ですから、もう少し何とかならなかったのかなと思います。

 パーツ割を見る限り、マストや機銃座、後部兵員室天蓋といった特徴的な相違点がKパーツに集中しているため、ここを差し替える形で対空・対潜兵装を強化した大戦末期型のキット(恐らく天一号作戦当時の雪風)が出てくるのだろうと思います。また、このスケールでは夕雲型を部品差し替えで出すのは難しいかもしれませんが、船首楼と船尾楼甲板の中央部が同じパーツで主砲塔や艦橋基部が別になっているのがなかなか意味深で、将来の展開をある程度は考慮しているのかもしれません(もし出なかったとしても、改造用の艦橋や主砲塔のレジンパーツが他社から発売されれば、改造は不可能ではなくなります)。

20060614
主砲塔1個分と艦橋はランナーが切り取られた形で入っていますが
説明書上ではF・K部品の一つとして扱われています


以下続きます

雑感:ハセガワ1/350「雪風」(その1)

2006–06–12 (Mon)
 雪風は19隻建造された陽炎型駆逐艦の中で唯一、終戦まで残存した艦でした。陽炎型は旧日本海軍の駆逐艦の中でも完成の域に達した艦で、先の大戦では空母機動部隊の護衛やガダルカナルの輸送を始め太平洋のほぼ全域に渡って最前線で活動しました。

 これまで発売されていた日本の軍艦の大型スケールキットは重巡以上の主力艦がほとんどで、駆逐艦はこれまで1960年代後半に発売された田宮の1/300雪風・夕雲と70年代に出た日模1/200秋月(初月)・陽炎(天津風)ぐらいしかめぼしいキットがありませんでした。今回ハセガワから発売された1/350雪風は、1976年の日模1/200陽炎以来、実に30年振りに発売された日本駆逐艦の大スケールキットで、非常に重要な意味を持ったものだと考えます。内容も水準を満たしたもので、作り込むのも容易ですが、シリーズの今後の展開にはやや懸念があります。

20060612
外箱はいわゆるキャラメルボックスですが
部品はふたがない丈夫な中箱に収められているため
外箱を開けたときに中身が飛び出すことはありません。


まずは評価表から。
これは私の個人的な主観によるものです。難易度以外は5つ星が満点、難易度は星が少ないほど易しいという意味で、星3つが標準レベル・白星は1/2と捉えて下さい。

ジャンル:近代艦船・旧日本海軍駆逐艦
名  称:雪風(昭和十五年竣工時)
メーカー:長谷川
スケール:1/350
マーキング:
モールド:★★★☆
全体的に薄味で、1/700の作り込みに慣れた人には物足りないかも。舷外電路はモールド済み。艦尾の爆雷投下台は要修正。
スタイル:★★★☆
実寸約1/343。このスケールでキャンバーの再現は出色だが一部修正要。船体形状も良好だが艦首の先端はややだるい。
難易度:★★☆
舷外電路のモールドを削るのは少し手こずる。竣工時にこだわらなければ1941年12月開戦時とするのが無難。
おすすめ度:★★★★★
大きさ・価格共に手頃。
コメント:モールドはやや薄味だが、素材としては最適。専用エッチングは要考慮。


以下続きます

長谷川藤一氏の戦艦山城

2006–06–10 (Sat)
 たぬきさんのBLOGで、かつてモデルアートに掲載されていた故長谷川藤一氏の記事を元に、青島1/700の戦艦山城の徹底工作という凄い製作を始められているのを見ました。

 私も長谷川氏の記事を読んだ時は「青島のあのキットがこうなるのか」と驚愕しました。そして同時に「これなら何とか作れるかもしれない」と腕も省みずに模型店に走った記憶があります。

 昔も今も徹底工作と言えばおよそ人間の技能の限界を試すような、とても真似できない作例がほとんどですが、その中で唯一と言って良いほど例外だったのが長谷川氏の一連の連載記事でした。かなりの工作量を強いるものが少なくなかった割に、これに従えばなんとか作れるかも知れないという、「その気にさせる」ものでした。

 そして無謀な少年はキットを買って記事や岡本好司氏の図面とにらめっこしながら、数ヶ月掛けて何とかそれらしいものを作りました。とはいっても、ディテール至上主義だった当時の私は記事で指示された船体形状の修正は出来なかった上に、それほど重要とも感じなかった記憶があります。

 その自称戦艦山城ですが、引っ越しの時に上部構造が大破してそのまま廃艦処分になりました。強度対策も何にもなく、ただディテールを加えていっただけでしたから当然の結果でしたが、あの当時の私にとっては「とりあえず最後まで作ってみる」という事が一番大事だったのかもしれません(これは撮った写真がなく、一部の部品は残っていますが、恥ずかしいので画像を載せるのは止めておきます)。

 さすがに廃艦処分から再度作り直す気力はなく、そのまま長い長い歳月が流れ、青島は今年5月の見本市で1/700戦艦扶桑・山城のリメイクを非公式ながら発表しました。早ければ年内にも出てくるという事ですが、あの当時の事を思うと隔世の感があります。

 そして実は私もこんなキットを持っていたりする訳です。
20060611.jpg

 青島旧ロゴ、旧デザイン仕様箱、定価600円…

さっぱり進みません

2006–06–09 (Fri)
 まず、Webページからの引き継ぎとして、この話から。

 いま製作しているのは練習帆船の初代海王丸で、今はなき今井科学から縮尺1/100で出ていたキットです(現在は青島文化教材社から発売中)。最初はそれほど手がかからないだろうと思っていたのですが、調べてゆくうちに問題点や納得できない部分が続出、右舷側の舷窓の配列修正に踏み切った時から泥沼にはまってしまいました。
20060609_1
(外箱兼完成予想図)

 現状は2月からほとんど進んでいません、はい。船首楼船室のモールドを一部作って、今はブルワークの内外のモールドの製作に取り掛かっています。製作がより困難になるため、ここができないと船首楼船室が接着できません。
20060609_2
(画像をクリックすると拡大表示します)

 ブルワークの内側にはフレーム位置に従って補強材が付くため、その内外のモールドの位置もフレームによって規定されます。キットはそこまで厳密には考慮されていないので、削った上で作り直します。写真で矢印が付いているのはムアリングホールと呼ばれるもので、船を係留するロープを通すための穴です。これも位置が若干ズレている上にブルワーク内側のモールドがないため、位置修正とモールドを追加しています。

ごあいさつ

2006–06–08 (Thu)
 みなさま、はじめまして。
 1997年から模型の缶詰というWebサイトで船と模型の話をずっとやってきた者です。今まで作ってきたものはこのページにまとめてあります。

 現在はWebよりもBlogの方が画面設計や更新の負担が軽く、また見る側の検索や閲覧も楽なので、製作の状況やキットの感想・雑記などはこのBlogで進め、Web本体は過去の完成品や撮ってきた写真や考察のまとめなどを溜める場所に改編することにしました。つまり、現在形で進んでいる部分をBlogに、終わったことがらをWebに役割を分散させるつもりです。

 また、Webの方はプロバイダの規約で非営利ということでやってきましたが、このBlogでは今までやこれから自分が見たり読んだ本やキットの中で、優れたものや初心者の参考になりそうなものを、広告という形で積極的に紹介してゆきたいと考えています。

 詳しくはまた通販のことを書いたときに述べますが、広告はあくまでも自分が見聞きした中からこのBlogを読んでいただく方々の参考になればという程度で、ジャンルやアクセス的にこれで利益が出るとは到底考えていません。もし酔狂な方が応援で買って頂けたら、キット紹介の経費が塗料1本の1割ぐらいは軽くなるかもしれません。何か参考になればそれだけでうれしく思います。

 それでは、出張所はじめます。よろしくお願い致します。

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プロフィール

MOMOKO.120%

Author:MOMOKO.120%
職業:自営業見習い
趣味:ブログの通り
模型の守備範囲:船
Webページ:模型の缶詰

現在は1/100初代海王丸の製作を一時休止して、ハセガワ1/350空母隼鷹を製作しています。

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